映画

早瀬
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『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を見た。

なんだかすごいバディものらしいという噂と、某作品のテーマソングがぴったり嵌まるキャラクターがいるという噂があちこちから悲鳴とともに聞こえてきて、「鬼太郎なのに……? そんなに……?」と思いながら映画館の上映スケジュールを確認しに行ったら、キービジュアルに白髪で片目の隠れた痩身の男がいた。この時点で嫌な予感がした。私は白髪のキャラクターと前髪で目が隠れたキャラクターが好きだからだ。作品のあらすじを読んで、白髪の男が鬼太郎の父、その隣にいる黒髪の男が水木さん、ということが分かり、キービジュアルの配置を見るに「すごいバディ」というのはこのふたりのことだろうとなんとなく見当がついた。「気になるけど休みの日に外出したくないな」という怠惰が勝ち、そのときはホームページを閉じて寝た。昨日の夜だ。

今日起きて、「休みだし外出したくないが、かといって一日引きこもっていてもなんもせずだらだらするだけだろうな」と思ったので、チケットを予約して劇場に行った。平日の午後なのにかなり席は埋まっていて、ネット効果かな(人生でゲゲゲの鬼太郎コンテンツに触れたのが初めてなので、ファン層の感覚がつかめない すいません)と勝手に想像しつつ座席に座った。両隣は男の人と女の人だった。

ネタバレになってしまうので作品の詳細に触れるようなことは書かないが、確かにバディものと言える内容だったと思う。製薬会社の秘密を探るためにやってきた水木さんと、行方不明の妻を探してやってきた鬼太郎の父が、隔絶された村で起こる跡目争いと惨劇に巻き込まれながら謎に迫っていく。初めは各々の目的のために一時共闘するだけの仲だが、次第に浅からぬ絆が生まれる、みたいなやつが好きな人(私だ)には向いている。日頃気づくとバディものばかり見たり読んだりしているので(MIU404とかシン・仮面ライダーとか犬王とかBAD DOGSとか)、またしても相棒関係に情緒をかき乱されていることになる(事前情報でそうらしいと聞いて興味を持ったんだから当たり前なのだけど)。鬼太郎の父と水木さんは、温度が低いけれど背中を、命を、未来を預けあえる相棒で、とても良いふたりだなと思った。相棒関係にフィーチャーした感想になってしまっているが、全体のストーリーがしっかりしているからこそ映えてくる相棒関係で、ホラー要素もあり、凄惨な事件もあり、因習村のお手本みたいな展開もあり、胸に刻まねばならない言葉もあり、エンドロールまでみっちり詰まったいい映画だった。作画もアクションシーンもすごくよかったし、単純にアニメ映画としてとても完成度の高い作品だと思う。結構しっかり流血とグロテスクな描写(と、劇場によるだろうがホラー映画の予告が入る可能性)があるので、人に薦めたいが慎重にいきたい部分もある。無意味なグロテスクではないにせよ、きついものはきつい。私はギリギリ直視できた。

鬼太郎の父と水木さんに関してはまだ言いたいことがいろいろあるが、これを読んだ未鑑賞の人が初めて観るときの衝撃を減らしたくないのでこのあたりにしておく。昨日の私の嫌な予感は当たっていた。初見で「ヤバいな」と思ったら実際だいたいヤバいのである。今脳内で霞み始めた記憶を反芻して薄ら笑いを浮かべる危険人物になり下がっている。助けてほしい。