無題

早瀬
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自分が見聞きして感じたり考えたりしたけれど言葉で言い表せなかったものを、ほとんどそのまま文章で表現できる人(の作品)に正面衝突して、久しぶりに悔しいと思った。どうして私はあんな風に書けないんだろう。

趣味で文章を書くようになってずいぶん経つが、思い通りに書けたことなんて全然ない。同人誌を出すための原稿作業も毎回泣きそうになりながらやっている。身内からは「なんでそんなに辛いのにまたやってるの」とか「趣味なんだからもっと気楽にやりなよ」とよく言われる。私だって原稿をやるたびに(もうこんなこと二度としないぞ)と思っているし気楽にできたらどんなにいいかとも思っている。それでも作品に対する自分の解釈を文章にしたいという欲求は突然やってくる。大した技量はないくせに、書き始めたら最後、自分が納得するものが完成しないと満足できないから、書けない書けないと言いながらパソコンと向き合い続けるしかない。自分は物語の消費者側で、生産者側じゃないのだとずっと分かっている。辛いからもうやめたいのに、いずれまた性懲りもなく書き始める。それでまたうまいこと表現ができない、ストーリーが組み立てられない、と苦しみだす。この繰り返しで数年生きている。