仕事とはダイビング

swm3
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人生に2度、ダイビングをしたことがある。海にもぐるスキューバダイビングだ。ハワイとケアンズで、それぞれ19歳と22歳のときだった。軽い気持ちで体験に参加したが、器具は重いし、直前になって急にこわくなってきた。最初は浅瀬で、酸素ボンベを使って口呼吸の練習をするのだが、これがとてもこわい。口呼吸しているのに、酸欠になった気がして、10秒で上がってきてしまう。しかし、いざ深くもぐってしまうと、なんとかなるのである。口呼吸以外の手段がないし、海のきれいさにも見とれて呼吸のことが気にならなくなる。2回ともこうだった。

さて、仕事というのは、始める前はとても億劫である。特に長い休みに入ってしまうと、すっかり脱力して、休み明けはほんとうにつらい。もう、あんな息苦しくて、意思力と体力を使い果たすところになんて、戻れないよ。いつもそう思う。しかし、いざ仕事を始めてしまうと、これまたなんとかなるのである。深くもぐっていくと、それはそれで充実した気持ちになる。仕事でしか見られない景色や感じられない経験というものはたしかにあるのである。

「仕事に意味はあるか」と問うことがある。それは、「スキューバダイビングに意味はあるか」と置きかえて考えると、示唆が得られるかもしれない。スキューバダイビングには、だれもが必ずやらなければいけない理由はない。ひとそれぞれ、スキューバダイビングをやりたい理由がある。海の中を見てみたいから。泳ぐのが好きだから。ウミガメに会いたいから。その理由はだれにも否定しえないし、理由がないならやらなくていい。仕事もそうだ。仕事をやりたい理由がそれぞれあり、理由がないならやらなくていい。仕事はそれ以上でもそれ以下でもないのである。