ゆるしんライナーノーツ

syasendou
·
公開:2024/4/29

思い出すあの頃。


一話「おとす」

 王道のゆるしん。元々はプロデューサーさんとの三言はこういうところがある、のような会話だったと思う。三言の端的な台詞を書くのが楽しすぎる! と思っていた。ここから三言の台詞をソリッドなものにしていこうという意識が生まれる。比鷺が値段を聞いてから「性能をそれで判断するのはよくないよな……」と思うのは過度な気にしいだとも思う。総じて良い子。ゆるしんの三言の目が宇宙だなあと思い、じっと見つめていた。

二話「とける」

 ミレニアム懸賞問題を解いたんだから懸賞金をもらった方がいいのだが、そもそも鍵を作った萬燈先生が解けているのに懸賞金をもらっていないので、フェアプレイ的に昏見がもらうのは違うのかもしれない。窓から入ったりしないで扉から入っている辺り、所縁くんの好感度を気にしてるんですよ、所縁くん!

三話「つくる」

 遠流が健気すぎる!!!!!!!!!!!!!!! 世界で一番可愛いツンデレがやりそうなことをテーマに書いた奥ゆかしいゆるしん。めちゃくちゃ忙しいだろうに、気づいた比鷺がちょっと嬉しがるかもしれないと思いながら線を引く遠流、健気。本編後の遠流は比鷺との距離を計りかねている。比鷺は普段は気がつくはずなのだが、こういう肝心なイベントをスルーしてしまう。

四話「なだめる」

 自分を叩いて炎上を鎮火させるのは、斜線堂有紀が見ていた配信者がやっていたライフハックで「なるほどな」と思ったもの。比鷺は炎上に傷つくとは言っているものの、自分の核の部分にはそこまで響かないので、こういう手段も取れる。遠流も当初はアイドルとしての自分を客寄せの偽物としか捉えていないので、いくら叩かれても傷つかないけれど、その分褒め言葉も全く響かない状態。なのが舞奏仕合で変わる感じ。比鷺が叩かれているのを見るのは大嫌い。

五話「さめる」

 今読むと全くゆるくない。怖い話だ。所縁の複雑な感情が出ている。昏見が自分自身への解釈違いで憤死しそうである。おまけの5000兆円とオカピとメガワインの昏見はあと30分もしたら良い夢になるだろう。

六話「とかす」

 ミレニアム懸賞の賞金に興味は無いけど国獲りには興味のある昏見。上を歩いた土は普通に売れると思う。闇夜衆が一番高いものというのは本当にその通り。萬燈夜帳の経済効果はすごいからね。そういえば、葉山さんの花を育てたら萬燈夜帳になるというツイートもあった。いよいよ経済効果がすごそう。

七話「きえる」

 この辺りで自由にやっていいですよと言われたので、自由にやった覚えがある。斜線堂有紀がギャグ漫画家だったらこういうネタばっかりやっていただろう。遠流には衝撃が強すぎたと思う。これ以上幼馴染を失うような経験をさせてはいけないということを示しているネタ。ペンギンはちゃんと四匹いるから問題ないね。

八話「たのむ」

 実際に覡として活動し始めたらクレプスクルムはこうなっるんじゃないか? という真面目な着想から考えたもの。昏見はその辺りの調整が上手いのでネット予約などを駆使してやりくりしている。初期の皋所縁なので、自分が特別に思ってもらっていることを理解しているけれど、まだそれを受け入れられていない。自己肯定感を少しずつ育んでいこう。

九話「わびる」

 明らかに悪手なのに、ミラクルが起こって割れ鍋に綴蓋の確変が起こることがあり、それがこういうことである。阿城木入彦、たまに神がかったファインプレーをする男。千慧は吸引力がすごいので、別にスプーンなんか要らないと思う。この回から登場人物紹介が入り、新規参入を意識していたのでキャラクター性がわかりやすいものにした方がいいのではないかと思う。思ってこれが出てくる。

十話「ためす」

 御斯葉衆初期の緊張感のある空気が反映されている回。佐久夜はいい具合に正解を叩き出したように見えるが、本当の正解は「巡が好きな方」もしくは「そこらの獣などより巡派」なので正解ではなく及第点。第二部が終わった時点では正解を完璧に叩き出せるようになっている。おまけ絵に衝撃を受ける。佐久夜はよくないですね。

十一話「かざす」

 登場人物の関係性やキャラ性がわかりやすいネタをという意識は消し飛び、自由にやった一作。「あれはゆるしんの三言なのでね」という台詞を使って良いか悩んだが採用してもらったので問題がなかった。大好きな三言が格好いいところを見せられてご満悦な遠流が微笑ましい。皋所縁、理不尽を覚えさせられる。

十二話「いやす」

 千慧の楽園のような生活の一端が垣間見れる一コマ目。千慧がしっかりしているのは遠流の前だけなので、働き蟻の法則のようにだらけ始めている。幼馴染の影があるぬいぐるみも可愛い。水鵠をわかりやすく紹介するがコンセプトだったものの、フェイクファーに意識が宿っているかのようなミスリードを行なっている。

十三話「あわす」

 鵺雲役のオーディション前にプロデューサーさんと話したことが元になっている。キャラクターを一言で表すなら? という話で、鵺雲の歪んだ価値観を表現しているほのぼのゆるしん。かわいいね覡になるかい? と声を掛けているが、猫が覡になりたいとやって来ても懇切丁寧に断る。

十四話「はだかる」

 二コマ目が好きでしばらく眺めていた記憶がある。萬燈夜帳の力を使おうが勝ちには違いないので昏見は誇るべきだと思う。負けず嫌いの度が過ぎているところも含めて昏見という人間のいい所が全て出ているのでいいと思う。比鷺は野良二人とやっているので、闇夜衆とやらされるのは流石につらい。先生一人ならなんとかなることが多い。おまけのゲーミング三言、ラスボスみたいだね。

十五話「あげる」

 絶対に間違えて注文することはない栄柴巡のいじらしさが光っている。ちゃんと長く使えたり身につけられるものをあげがちなところが栄柴巡。九条鵺雲は、なんとなくそうした方が巡が輝き出すので同じことをしている。この頃、まだゆるしんの佐久夜にもセリフがあった。おまけ絵が本当に素晴らしい。佐久夜の考えた理想の世界だ。あくまで花冠を与えているのが巡なところも良い。

十六話「のみほす」

 言質を取られるということは契約を結ぶことでもあるということを重々理解しているにもかかわらず、昏見がミスを犯す回。貴子さんがこの有様を見たら怒るだろう。烏龍茶と三言色のドリンクで乾杯のおまけ絵だけがかわいい。

十七話「そなえる」

 萬燈夜帳と八谷戸遠流の明らかに全てが上の大人に果敢に挑んでいく少年の関係性が好きで、よく張り合わせてしまう。子供ではいられなくなってしまった遠流なりのじゃれつきのような気分なので、遠流の境遇を思うととてもほっこりとする。比鷺に対する当たりの強さもじゃれつきの一環ではあるんだけれど、対萬燈夜帳だと相手が全然物ともしないという安心感もある。萬燈夜帳は別にこれを遠流用に書いたわけではないのに、かっこいいキャラが主役だ……僕だ! になるのもとてもいいところ。ごく自然に部屋にいる上に「あの人CG使うななんて言わないと思うよぉ」と知った口を利く比鷺もいい。おまけ絵のロングパスが少し泣ける。

十八話「ととのえる」

 伝説のナナハム登場回。浪磯の海を再現しながらもパラソルが水鵠カラーだったりと、少しずつ千慧の居場所がこちらに移っていることがわかっていく回でもある。ちなみに阿城木が渋い顔をしているのは、海にするくらいなら先に言ってほしかったからです。おまけ絵のミネラルウォーターを沸かした過去すらポジティブに昇華する阿城木は本当に気持ちの良い男だなと思う。

十九話「まもる」

 言葉の代わりに大切な気持ちを手に入れ、巡の為に頑張り始めた佐久夜。主人のためなら台風にだって勝てる。台風にだって勝てるなら家にだって勝てる。巡はとても素晴らしい主なので、佐久夜を表立って褒めるのではなく自分が喜んでいる姿を以てして褒美とする素晴らしい姿勢を見せている。ヒーローになれ、佐久夜。

二十話「ぬすむ」

 昏見と所縁の夢の対決なので好きな回。実現させてくださったSMILE*さんに感謝しかないです。殺人事件以外は神がかった推理力を発揮するわけではない皋所縁のとても地に足のついた推理。ゆるしん史上一番好きかもしれない。

二十一話「はえる」

 一コマ目で一旦落ちているところが好きなゆるしん。実質二本分でお得。阿城木家のとっても広いお風呂やテーマパークなど楽しいところが多い。水鵠衆の人生楽しみ尽くす姿勢が出ていてとてもいい。動く耳は可愛い上にあったかい。去記が外の人から呼ばれるとしたら白いお兄さんか耳のお兄さんになるんじゃないかなと思った覚えがある。

二十二話「あやまる」

 すっかり仲が元に戻った感じのする幼馴染。よくよく考えたら比鷺ってあまり遠流に怒らなそうな気がする。よっぽどのことを言われなければこうまでならなそうである。みこちの大きさがインフレし始めている。

二十三話「おく」

 ジューンブライド動画に合わせたネタ。セリフの代わりに全てを手に入れた佐久夜。普段からたまに主を横に置かせていただいて、悪夢を見た時も主が傍にいたというのに貪欲だ。最強の主人+見つけた理想のもう一人でとうとう最強! がコンセプトだろうか。巡が比較的優しいのは佐久夜の悪夢の内容が内容だったかもしれない。

二十四話「ほしがる」

 あまりに可愛いのでナナハムで覇権を取ろうとしていた。最初のミステリアスかつ尊大な態度の千慧は一体どこに行ってしまったのだろうか。阿城木、自分の懐に入れたものを際限なく庇護する男。地元の守り神。

二十五話「つく」

 やりたい放題。萬燈夜帳大はしゃぎ。別にあんな事態を引き起こしたかったわけではなく、自分が全力で作ったものでも九条比鷺ならいけるだろうという期待とわくわくによる読み違え。比鷺、なまじクリア出来る程度の力は持ってしまっている。Bloodborneというゲームに啓蒙という概念があるのですが、それのイメージ。

 遠流がめちゃくちゃ泣いて取り乱しているのが味があるポイント。比鷺までいなくなったら遠流はどうなってしまうんだろうか。味方につけると心強くなるみこち。

二十六話「きづく」

 昏見働き過ぎじゃないかという雑談から生まれたネタ。ネタ自体とオチは気に入っているものの「昏見のような美学を持った我の強い人間は、果たして自分が複数人いる状態を許容するだろうか」ということに気づいて悩ましくなった一本。皋所縁は一人しかいないのに、昏見が複数人いるというのは美学に反する。複数人の昏見はかわいい。

二十七話「のべる」

 初心に帰って新規読者に優しい話にしようということになったので、それを受けて作った一本。なんだか少し番外編っぽいのはそのためだろうか。パブロヴァもおやつで出てくる。阿城木家ならね。

二十八話「かえる」

 インフレし過ぎた三言の大きさを小さくする回。前のゆるしんを踏まえると遠流が萬燈夜帳を頼るのも気まぐれな感じでいい。猫だ。正直、この時期SF短編を山のように書いていたので少しドラえもんのダークな回のような趣が出ている。「楽しいこと」なのか?

二十九話「はりあう」

 一、二を争うくらい好きな回。なんだかんだ御斯葉衆を表しているとても良い回だと思う。鵺雲もおそらく巡と一緒に出かけた方が趣味があって楽しいし、巡もかなり満更でもなく楽しい。佐久夜がいなかったらそれなりに仲良くできていたかもしれない。化身持ちである時点で無理かもしれない。夜叉憑きである時点で無理かもしれない。

三十話「ならぶ」

 ベンチより先に設置するものなんてない回。阿城木は常識に囚われているので、もっと住み心地が良さそうな統一感のある部屋にしてほしいだけで海を作られたことはもう気にしていない。海のように広い心の持ち主である。夢のポッキー一気喰いといい、ゆるしんの千慧は本編の隙間にある、ありとあらゆるドリーム生活を垣間見せてくれる。一気食いした方が食感がいいんだ。トランポリンはおそらく去記の希望。すごいや、阿城木は願いを叶えてくれるんだ!

三十一話「ゆめみる」

 捲土重来!

 

@syasendou
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