ウマ娘映画(新時代の扉)の感想を出力

symr
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公開:2024/6/16

ウマ娘の映画(新時代の扉)見に行ってきた。

楽しかった!! ウマ娘のアプリ自体は最近は熱心にやってなくてたまにログインするくらいだし、アニメも3期は結局途中で止まってるからそもそもウマ娘そのものにしっかり触れるのが久々だったかもしれない。二次創作とかはたまに受動摂取してるんだけど。どちらかというとウマ娘の影響で見始めた競馬の方に費やしている時間が多いというありさまだ。ただ、ウマ娘自体のことを嫌いになったとかではなく、いまだにライスシャワー(ウマ娘)の存在があれば死ぬまで萌えという感情を忘れずに済むと思っている。(ダイワスカーレット(ウマ娘)も好きだ。こっちはリアルの方もだがな! というか好きなウマ娘を書き出したら多分きりがない。タキオンとかも……)

見ようと思ったのは木曜の夜で、衝動的だった。しばらく先までの予定を考えたときに、見たい映画とか行きたいところとかやりたいこととかが結構詰まっていた。この映画はずっと見たいと思っていたけど、ウマ娘RttTの劇場版も気づいたら終わってたし、他の映画も近所での上映が終わってしまったりしてちょっと悔しい思いをしていたので、見そびれる前に行っておこうと思った。

レース映像がすごくよかった。ウマ娘って世界観自体がかなり変で、なんで馬のレースと同じことをヒト型の生物がやってるんだみたいな疑問は未だにある(特に競馬を見ている人ほど思うだろう)んだけど、実際に映像として出されたものを見ると没入せざるを得ない説得力がある。これはゲームの方も同じで、延びに延びたリリースの日にちょっと冷やかしくらいの気持ちで始めてみたらすっかりハマってしまった。ぶっとんだ設定ではあるけどあくまで真剣にかつ魅力的に描くことで地に足がつくんだな~と。時速60km/hくらいで走るヒト型の生き物がいたらああいうコースは必要になるよな、みたいな説得力が。カメラワークが観客席視点、俯瞰視点、走者視点と色々とあって、どれも実際に競馬見てる時の感じがちゃんと出てる(現地、中継、ジョッキーカメラのそれぞれと非常に近い視点になっている)。本物のレースを見てるみたいな臨場感があった。ウマ娘のレースの描き方は昔から評価高いけど、劇場版として作られてることもあって演出も派手派手だし段階がさらに上になってる感じがしてよかった。実際の東京競馬場の直線って長くて、レースを見ていてゴールはまだか! って思うこともあるんだけどこの映画で出てくる東京競馬場の直線も長い。大きいレースで勝った騎手が「最後の直線が長かった」みたいなことをよく言うけどそれを追体験したようだった。

「ウマ娘は走るために生まれてくる」みたいな話が途中で出てくるのだけど、これはこちらの世界のサラブレッドと重なりあう部分だよなと思った。サラブレッドは基本的に競馬のためだけに生産される家畜なので、競馬で使う能力が低いと使い道がないとされてしまう。そのため勝てなかったり怪我したりして引退した馬をどうやって生かすかという問題があったりするのだが……。引退したウマ娘は人間社会で生きれるのでまだ生存は保証されているが、ウマ娘は「本能」のために走らざるを得ずそれに苦悩することになる。「走るために生まれた存在」という設定はなぜウマ娘がレースに執着するのか? という疑問に対する回答として用意された設定だと思っていたが、意外な形でこちらの世界の馬と繋がることに驚かされたなー。映画の中ではおそらくレースで頂点を目指したりせず普通に暮らしている(ように見える)ウマ娘の存在も描かれてはいたことで、走ることと縁遠いウマ娘の存在が示唆されている。現実のサラブレッドたちも、走れなくなっても皆普通に生きていけるような社会になればいいのだけど。

以下、ストーリーについて(若干ネタバレあり)。

実際の馬「ジャングルポケット」の史実から外さずにストーリーの盛り上がりを作るためにタキオンとフジキセキの存在を使ったのは面白いアイデアだと思った。物語序盤で「ダービーを勝つ」ことが目標になり、それを達成したあとどうなるんだろうという点は気になっていた。そこで、将来を嘱望されながら走れなくなったタキオン・フジキセキの「もしも」の話をつかって、「もしも」を乗り越える話にしたのは見事だったと思う。実在の「アグネスタキオン」も「フジキセキ」も、幻の三冠馬と呼ばれる存在で、2024年の未だにして「もし無事だったら……」みたいなことを言われがちな馬だ。そしてそれらはウマ娘の彼らにも反映されていて、じゃあその後実際に勝った者たちとどっちが強かったんだ? という話になる。とはいえそれを確かめることは叶わない。映画のストーリーがそうした現実にあるジレンマを取り上げる形になっているのが面白い。

後半ではタキオンの面影に勝てないという呪縛にとらわれたジャングルポケットがそれを乗り越えようとする様が描かれる。その「もしも」の重さによってタキオンが短い間にどれほどの強さを残したのかよくわかる(前半で描かれたタキオンの走りの演出が素晴らしかったのもある)。私は実際の「アグネスタキオン」の走りをリアタイしてないし、あくまで伝聞やウマ娘内で表現されたフィクションとしてしか触れていない。それをこの映画の中で実感を持たせてくれるのだからすごい映画だ。フジキセキが味方サイドにいるのもすごい配役だ。現実としても「フジキセキ」と「ジャングルポケット」の間には縁があるのだが、ライバルと味方の両方に「幻の三冠馬」がいるという構図がいい。「幻の三冠馬」の呪縛を解くのはまた「幻の三冠馬」なのだ。フジキセキ自身も「もしも」を、到来しなかった未来を抱えている。ここのフジキセキの語りがすごくよかったんだけど具体的には忘れてしまった……。そのフジキセキがそれに向き合う姿はジャングルポケットだけじゃなく私の心をも動かした。

そしてタキオンも動かされた。タキオンは再びレースに出て、ジャングルポケットと走ることになる。現実では叶わなかった未来を想像させてくれるのが競馬オタクとしては楽しい。この手のエンディングはTV版アニメ2期でもやったのでなんとなく予想はしていたが、タキオンもまた自身のもしもに向き合う様子が、あのジャパンカップのシーンの演出もあってすごく沁みた。

あらすじだけを書き出すとシンプルなんだけど演出の力で何倍も魅力が増していると思った。トリックとかどんでん返しやミスリードの類はなく、シンプルな物語を最大出力の演出で見せてくれる感じ。

ウイニングライブの存在については未だに馴染んでないけど、現実で好きな馬にファンサされたら嬉しいよね? と言われると「ウン……」としか言えなくなってしまうので何も言えない。ちなみに現実の馬はレースを走る前にパドックで間近で見れるし、ファンサしてくれることもある。

この数年ですっかり競馬オタクになってしまったのでそっちの視点での語りが多くなってしまうけど、競馬もウマ娘も知らねえ! って人の感想を見ると面白い。時間が許せばもう1回くらい見に行ってもいいかも~。