推し馬「チェルヴィニア」ちゃんを追ってきた1年について語る【Misskey.io競馬部アドベントカレンダー2024】

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はじめに

 この度Misskey.io競馬部アドベントカレンダー2024に参加します!

 初めに少し知らない方のために説明すると、Misskey.io競馬部はMisskeyのioサーバーにあるチャンネルで、早朝から深夜まで、国内海外問わず一日中競馬の話がされている場所です。本企画は競馬部内で寝東海月さん(@netou_kurage)が立ち上げてくださいました。

 競馬部は「ここは競馬をスポーツやギャンブルとして愛してるお嬢様の集まりですわーーーっ」(引用)という説明文の通り、競馬愛が深い人々が集まっており、馬券の当て方以外ならどんな情報も集まるとされています。(この記事のヘッダーも競馬部員の黒井澪さん(@[email protected])に作成いただきました。ありがとうございます!)

 ついでに私のmisskey.ioアカウントも載せておくので、もしよかったら見てみてください。動かす頻度は比較的多くないですが……。


 さて、そろそろ本題に入ります。

 2024年の競馬を見てきた方なら間違いなくご存じでしょう。今年の牝馬クラシック戦線の主役のひとりだったチェルヴィニアのことを。彼女は私の推しでした。

 本記事では彼女が辿ってきた軌跡と彼女の魅力をいちオタクの視点から語っていきたいと思います。

ゼロ目惚れのあの子(とその兄)

 チェルヴィニアとの出会いを語る前にまずその兄「ノッキングポイント」について語らなければいけません。

 2023年2月19日、私は東京競馬場にいました。その日のメインレースはG1フェブラリーステークス。今や近年のダート馬の代表格となり、先日引退したばかりのレモンポップがG1初挑戦したレースでした。その日、もっぱら私の関心は推しのレモンポップが距離不安を克服できるのかというところにありましたが、メインレースを3時間先に見据えた6Rのパドックで運命的な出会いが起こりました。

 パドックを周回していた目つきが鋭い栗毛の馬、私はその子に釘付けになりました。その子こそがチェルヴィニアの兄であるノッキングポイントでした。

パドックでのノッキングポイントの写真

 希代のグッドルッキングホース、ジャックドールにもよく似た鋭い目と栗毛流星の姿(なんと父も同じくモーリス)。その後レースで見せた走り(1着)も見て、彼を推すことを決意しました。

 その後、ダービー5着を経て新潟記念を制するノッキングポイントですが、あの出会いの日からしばらくして、6月に彼の妹がデビューするということを知りました。となれば気になってくるのがオタクの性。この時点でノッキングポイントの妹ことチェルヴィニアを推すことを決めました。さながらゼロ目ぼれといったところでしょうか。

チェルヴィニア、デビューする

 安田記念デーの5R。つまりその年東京で最初の新馬戦でチェルヴィニアはC.ルメール騎手を鞍上にデビューしました。チェルヴィニアはやや行きたがりながら逃げるも、好位から追って来たボンドガールに差されて2着。

 そのときの新馬戦のパドック写真が以下のものになります(ガビガビ画質で申し訳ないですが……)。

新馬戦パドックを周回するチェルヴィニア

 兄ノッキングポイントと違い鹿毛ではあるものの、同じデカ流星。兄とは違うつぶらな瞳。体格こそ違うものの、その可愛さはあの大アイドルホースメロディーレーン様と似通ったものがあるのではないでしょうか(のちに出たアイドルホースぬいもよく似ている)。

 その後新潟の新馬戦で圧勝し、迎えたのが出世レースとして名高いアルテミスステークス(G3)。ご存じの方も多いと思いますが、リスグラシューやラッキーライラック、ソダシ、リバティアイランドなど名だたるG1馬を輩出した出世レースです。

アルテミスステークスのパドックを周回するチェルヴィニア

 上の写真がそのときのパドックです。新馬戦のときと比べると体つきは成長し、表情も凛々しくなっているように見えます。このときパドックで見た彼女はあまりにも可愛くて、アイドルとして日本中を席捲してしまうのではないかと思われました。元来のつぶらな瞳と独特な流星からなる整った顔にほのかな自信が浮かび、このまま武道館のステージにだって立てるはずだと確信させられます。

 そのレースでチェルヴィニアは好位につけ、直線半ばで馬群から抜け出し勝利。ここまで全レースで連対。個人的にはこのままクラシック三冠も狙えるのではと思われました。

怪我、重なる不運、そしてクラシック。

 アルテミスステークス勝利後、阪神JFを目標にしたチェルヴィニア陣営。しかし怪我でこれを回避することになってしまいます。同時期に兄ノッキングポイントも菊花賞で怪我を負い休養に入ってしまい、個人的につらい時期でした。

 次走がどうなるかわからない時期が続きましたが、年が明けてクラシック前哨戦が始まる中で桜花賞に直行することになります。重賞勝ちしていることもあり賞金面での不安はありませんでしたが、問題はその間隔。前走アルテミスステークスからの期間は161日と半年にも迫る長さになっています。

 さらに不運が重なります。主戦のルメール騎手がドバイミーティングデーで落馬事故による負傷を負ってしまったのです。最終直線で騎乗馬が転倒したことによる落馬で、目を覆いたくなるようなものでしたが幸い命に別状はありませんでした。しかし全治数週間の怪我を負ってしまっては、一週間後に控える桜花賞に乗ることは不可能でした。

 長期休み明け、主戦の不在という不安要素を抱えた状態でチェルヴィニアは桜花賞に出走します。

満開の桜とチェルヴィニアの応援馬券(桜花賞)

 鞍上はB.ムルザバエフ騎手を代役とし、枠番は大外18番枠になりました。悪くないスタートでゲートを出ていきます。しかし向こう正面では外をするすると上がっていってしまい、折り合いを欠いているようにも見えました。いい手ごたえで直線に向いたようにも見えましたが、馬群がペースアップしたのについていけず下がっていってしまいます。結局着順は13着で、初めて連対を外したうえクラシック初戦を落としてしまいました。

オークス。母チェッキーノの忘れ物を。

 チェルヴィニアがデビューしたころ、私は彼女がオークスを勝つと信じていました。なぜか。その理由は彼女の母にあります。

 チェルヴィニアの母はチェッキーノといい、同じサンデーレーシングが馬主。名門・藤沢和雄厩舎からデビューし、11月の新馬戦2着から未勝利戦を勝ち上がり、クラシック戦線に向かっていきました。

 チェッキーノは桜花賞トライアルのアネモネステークスを勝利するも、オークスに狙いを定めてトライアルのフローラSへ向かいそこも勝利します。そして本番のオークスでは戸崎騎手を鞍上に迎えて2番人気で出走しました。しかし、2016年オークスの勝者はシンハライトでした。チェッキーノが抜け出そうかというところで後ろから最高のタイミングで抜けてきたシンハライトに差されて、クビ差の惜敗でした。その後チェッキーノは屈腱炎を発症し、一度は復帰するものの好走はできず屈腱炎が再発したことを機に引退することになりました。

 チェルヴィニアのデビュー後に母の存在を知りその戦績を見れば、その子はオークスに適性がありそうだと思うのは当然でした。デビューして好走し、クラシックに挑めそうだとわかると皮算用が次々に浮かんできます。

 アルテミスステークスは勝ったし、マイル適性はわからないが世代戦ならマイルでも通用するかもしれない。そこで通用すればオークスを勝てる可能性は高いのではないか? そうなれば牝馬三冠も見えてくるかもしれない。推しが、三冠馬に……。

 しかし怪我で臨戦過程が乱れ、桜花賞でうまく走れなかったこともありオークスではどうなるかわからなくなりました。チェルヴィニアはオークスへ直行することになりましたが、桜花賞を勝ったステレンボッシュも強敵として参戦してきます。

 そんな中で、頼もしい人が帰ってきます。桜花賞前に落馬事故で負傷したルメール騎手です。当初復帰時期は未定でしたが、NHKマイルカップに合わせて騎乗を再開。オークスの2週間前でした。

 オークス当日、チェルヴィニアは2番人気で迎えました。桜花賞で13着だったのでもっと人気が下がるかと思いましたが、桜花賞馬ステレンボッシュに次ぐ人気です。

オークスのパドックでルメールが騎乗したチェルヴィニア

 あっという間にメインレースの時間が来てしまいました。場内はかなりギチギチになっていましたが、運よくスマートシートを確保できていたので席と視界には困りませんでした。お馴染みの関東G1ファンファーレが流れて、ゲートが開きます。

 チェルヴィニアはスタートでやや後手を踏むも、徐々にポジションを上げて中団馬群の後方につけました。1番人気のステレンボッシュをマークするような形で進んでいきます。事前にルメール騎手がミドルポジション運べればと言っていたので、想定通りのように見えました。

 G1はいつ見ても緊張しますが、推しが出ているときのG1は自分が関係者でもないのにお腹が少しヒュッとなるくらい緊張します。2022年の天皇賞・秋も2023年の天皇賞・秋も、ジャックドールのことしか見ていなかったため他のことはあまり覚えていないというある意味貴重な(そして少しもったいない)経験をしています。こういのはリアタイしているときにしか得られないことだと思うので、この時代に競馬が盛んで数々の名レースを見ることができているのはとても運がいいことだと思います。過去の名レース(例えば「テイエムは来ないのか!テイエムは来ないのか!テイエム来た!」のあれなど)を今見ても興奮しますが、結果が見ていない状態でそれを見ることができるのはかけがえのないことだなぁ……とときどき思います。

 3・4コーナーではじっくりと追い出しを待って、直線へ向いたときはやや後方に位置していました。しかし馬群は横にばらけ、チェルヴィニアの前にはスペースができました。ステレンボッシュは内へ向かいます。先にクイーンズウォークが抜け出して先頭を走り、内からステレンボッシュが抜け出そうとします。チェルヴィニアは少し遅れたところから外を追って伸びてきます。

 ちょうど私の席の前を通過するとき、チェルヴィニアがステレンボッシュに追いつくかどうかというところでした。私は無我夢中で「チェルーー!!」と叫んでいたことだけは覚えています。ステレンボッシュも粘りますが、チェルヴィニアが差し切って1着でゴール板を駆け抜けました!

2024年オークス ゴール後の掲示板

 母チェッキーノが果たせなかったオークス制覇を、チェルヴィニアが果たすことができました。見比べてもらうとよくわかるのですが、オークスでのチェッキーノの走りとチェルヴィニアのそれはポジションやコース取りがとてもよく似ています。血統には疎い私ですが、こういうところで競走馬の血のつながりというものを感じて面白いですね。

 デビューから追ってきた馬がG1を勝つまでの過程を見ることができて本当によかったですし、阪神JFと桜花賞での挫折を経て有力とされる馬でもG1をひとつ勝つことがどれだけ難しいかを改めて感じました。

 この後夏を経てチェルヴィニアは秋華賞へと向かいました。新馬戦で敗れた相手のボンドガールと、おなじみステレンボッシュと対決して勝利し二冠牝馬となりましたが、その後のジャパンカップも含めてまた別のお話ということで。以上でオタクと推しのいままでをいったんまとめたいと思います。

 次に、チェルヴィニアちゃんを追っていく過程で集めた記事などを紹介してみようと思います。彼女の馬となりに少し詳しくなれると思うので見ていただけると嬉しいです!

チェルヴィニアの性格は? 寝るのが好きって本当?調べてみました!

【オークス】実は寝相が悪い!? チェルヴィニア流こだわりの寝方とは? ゆるい出馬表! | 競馬コラム - netkeiba

↑オークス出走時の「ゆるい出馬表」です。このシリーズ好き。

↑ライバル、ステレンボッシュやアスコリピチェーノ・レガレイラなど同世代の有力牝馬たちと一緒に紹介されています。

 どうやらおとなしいものの触られるのは苦手で、寝相が変わっているみたいです。いかがでしたか?

 カワイイ~~~~~~♡♡♡♡♡

ハッピーパス・ハッピートレイルズ

 チェルヴィニアの母系を辿るとハッピーパスとハッピートレイルズという名前が見つかります。

 同じくオークスに挑んだハッピーパス、吉田勝己氏と藤沢和雄元調教師の奇妙な縁で日本にやってきたハッピートレイルズの物語を知るとチェルヴィニアのことももっと好きになりました。

 競馬は歴史なんだ……と改めて思わされます。

おわりに

 競馬はブラッドスポーツとも言われ、様々な場面で血統の話が出てきます。しかしウマ娘から競馬を見るようになった私にとっては、血統はすこし遠いところにある話でした。ウマ娘血統などの話は聞くものの、他のスポーツと同じように目の前のレースに関心があるのであって種牡馬や牝系などの用語にあまり興味は持っていませんでした。しかしノッキングポイントとの出会いを経てチェルヴィニアやチェッキーノ、ハッピーパスなど様々な馬のことを知り、血統の面白さに少し気づくことができました。その点でもノッキングポイントとチェルヴィニアに出会えてよかったです。彼らの下のきょうだいたちの活躍も楽しみです。

 最後に、競馬はたくさんの楽しみを与えてくれる一方で馬や騎手には常に危険が付きまとっています。今年は騎手の殉職もありましたし、レース中に怪我をして走れなくなったり命を落としてしまう馬もいます。今の日本では馬が社会のなかで生きていける領域が狭いので、引退した馬が生きていけなくなってしまうことも頻繁にあります。一ファンの立場ではありますが、馬と馬に関わる人たちが無事に豊かに生きていけることを願いながら来年も馬券を外していきたいと思います。

 最後まで読んでいただきありがとうございました! 加えていつも楽しいノートとリアクションをくれる競馬部のみなさんにも感謝を!