他人であるということは決して不幸ではなく。 映画「違国日記」に寄せて

syunminzzz
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公開:2024/6/16

(冒頭だけ、頭を抱えたところの話をしています)(原作全巻読了済)

原作の好きセリフが省略されて、「う〜〜〜」になるところが多い、けど映像化にあたってヤマシタトモコさんの言葉の多さが自然に映るのか分からないので、難しさも感じました。

あと男性の話は尺の問題もあって、わざと切り離してるんだろうけど、けど……。としょんもりしてしまった。笠町くんの良さって、言及されないとこうも露わにならないのか……という驚きもある。一緒に見てくれた友人(ほぼ原作を読んでいない)に「笠町くんどう思った?」って聞いたら「距離感近いしデリカシーないと思った……瀬戸康史はかっこいい…」みたいなこと言ってて「違うのーーーーーーーーッッッッ‼️‼️‼️‼️笠町くんは、笠町くんは…………‼️」になった。でも原作の時間軸より若干前の笠町くんなのかも。そう思えばギリギリ納得できます。あとえみりママの入学式のセリフはあるのにその後の交流が描かれないから、きっと映画軸のえみりママは槙生ちゃんに悪い印象を持ったまま過ごすんやろな……と思い、辛かった。

物語のはじめ、朝の両親が亡くなるシーン。これは漫画よりもああ……とかなり辛い気持ちになりました。映像として見るとさらに身に迫って感じられて。あえて対比させているのだとは思うけど、青空の下で家族と遊びに来た十五歳の朝が無邪気で、よりしんどかったですね。

あと映像化されることで槙生ちゃんの自他境界があるところがより可視化されて、人懐っこい中学生がこういう人にいきなり(しかもはじめて)出会ったら、受け入れ難い距離感かもなあとは思いました。槙生ちゃんが/朝が悪いとかではなく、相性の問題だなあと。

でもだからこそ他人なのだ、という気持ちと家族と暮らしている時だって当たり前に他人と暮らしていることに気づくことのできる朝の変化を自分のことのように受け取ることができて良かったですね。これは、えみりとの体育館のシーンでも思ったかも。あなたはわたしを踏み躙ることがある、友達という関係のこと。

あの、新垣結衣さん演じる高代槙生がこんなにも最高だとは思いませんでした。マンションに入る時の歩き方が猫背でちょっと大股で腕を振らずにずんずん進んでいくところとか、隣に視線を向けた時の鋭さとか。きっと槙生が現実に生きていれば、と何度も感じました。早瀬憩さんもかなりハマってて、朝の素直なところと殻にこもっている部分がすごいバランスで演じられていて、とても素敵でした。あと最後のミニライブのシーンも良かったなあ……。橋本絵莉子さん、最高。

@syunminzzz
主に現場のこと