寒さがだんだん強くなっていったあの季節、寂しく1人家まで歩いた夜道、帰りの電車までの改札、帰宅した後の風呂場で聞いた歌、親に泣きながら電話した早朝。あの日から記憶は薄れて、顔も声も匂いも日々薄れていくが、思い出だけがどうしても忘れられない。あの日の情景は何度も何度も繰り返し思い出す。そして、何度も何度も夢にまで出てくる。
もういいじゃないか。楽にさせてくれよ。今まで散々傷つけられてきたのに、なぜまだ傷つけてくるのだろうか。もう会いたくないのに、後悔しているのか、どうしても確認したくなる。もう、なにを思われてもどうでもいいのに。きっと今頃、忘れて進んでいるというのに。自分だけ取り残されているという感じが苦しい。そんなことに腹が立つ。
人によるが、失恋なんて死ぬまでの心境には至らないのだ。失恋した次の日はあっさりご飯が入るし、バイトにもいけて、人にも笑顔で接客ができる。楽しみにしてたライブにも心が高鳴ることができる。そんなものだ。たまに、夜眠る前に思い返して2、3粒涙を流せれば、何に悲しんでいるのか、バカらしくなってくる。
人は強い。自分が今、絶望のどん底にいても、世界は、日常は変わらない。この自分の辛さも誰も知らない。悩みを相談したとて、相談相手からしても他人事に受け取られる。だからこそ、自分で乗り越えるしかない。自分の弱さを真正面から受け止めて、考えて。きっかけがあれば、自分が決意すれば、時が経てば、また立ち上がれる。
自分はまだ立ち上がる最中の真っ只中なのかもしれない。そう思って目の前のことに全力を注ぐ。執着なんて暇なやつがやることだ。と心に鼓舞していくしかない。いつか同じ境遇の人がいたら、この経験を通して慰めてあげたい。いつかきっと、あんなやつなんて忘れて、強くなれる日がくると。