過去の衝撃に未来の私は救われている。
女の人が格闘技(キックボクシング)をやっていることが個人的にはとても衝撃だった。某女性歌手がSNSにトレーニングの様子を投稿していたのを見て「女の人でもこういうの(格闘技)出来るんだ。」と関心を抱いたのがきっかけで。そこからやってみたい意欲はあったものの、ジムに通ったこともない、ましては運動を習うなんてしたこともない、そんな人間が出来るはずないと決めつけ。遠目で見てるだけで良いのかもと数年経ち、キックボクシングのことをふと知人に呟いたところ自分が通っているジムを紹介してくれた。後から「まさか即入会するなんて思わなかった!(色々見て回るものかと思っていた)」と言われたが、これは逃してはいけない機会だと入会を覚悟して体験レッスンを受けた。
入ってすぐに上達!楽しいジムライフ!なんて器用なことはなく。全身を使うスポーツに苦戦、苦戦、全敗。体力だけはそこそこあったのでそこだけでなんとか持ててる感じ。コンビネーションを覚えることは出来ても体現出来ない。耳から入る情報を全く処理出来ず。これに関してはリズム感がないことが原因で、擬音語で分かりやすく説明してくれているのに、体はまるで言うことを聞かず、周りと比べてワンテンポ何かが違う。鏡に映る自分の姿にしっかり絶望、楽しいより苦しい、苦しいより恥ずかしい気持ちが上回る。やりたくて始めたことだったのに、思い描いていたものとの温度差。全然簡単じゃなかった。グループレッスンに参加することが多く、周りの上手で美しくてカッコ良くしなやかな会員さんたちに囲まれなんとなく惨め。だけど周りの誰も笑わない。自分で言うけど明らかに動きがおかしいのに。私一人出来ないことなど気にしていない。というか見てもいない。現役格闘家、元格闘家なトレーナーさんたちもツッコミどころ満載であろう動作の私を見捨てることなく、特段気に留めずフォームを修正してくれたり、より良くなるためにたくさんアドバイスをくれた。他のジムに通ったことがないのでわからないけれど、この場所は人は人、自分は自分とメリハリがついている、そんなところに救われて、出来ないことが悔しいしちょっと楽しい、妙な動きの自分、もはや笑える。週2日は最低でも通っていこうと決めてから今年で3年目。
ジムに通い始めて1年半過ぎたあたりで自分でわかるくらいには体が変わった。その中でも大きく変わったことと言えば、筋肉がついたおかげで体重が増え、体調を崩すことが圧倒的に減ったこと。風邪はおそらくもう1年以上引いていないし、身体が疲れにくくなった。疲れる前に休めるようになった。ご飯を食べてしっかり寝れば翌日には回復。傷の治りが早くなったのはちょっと怖い話かもしれない。
人と過ごすときは気にしないけれど、一人の時はこだわっていこうと食べる物を変えたのも効果的だった。そこそこ自炊生活からがっつり自炊生活、忙しくても続けることをプライドにした。元々飲まないこともあったけれど、お酒に関してはもう5年以上口にしていない。これだけだとなんだか固そうに見えるけれど、嫌になることはなくて、自分が自分を作っていく過程はとても興味深くて、変化が面白い。あと一桁台だった握力が30㎏前後になった。これはあまり使う場所がない。
大抵のことは頭の中で。見てるだけで良い。始めるまでの一歩は錘をつけているかのように重い。石橋は叩くだけ叩いて渡らない。断るのが苦手な自分の性格を見越し、始めるつもりで足を踏み入れて本当に良かった。入会理由に「健康になりたい。」みたいなことを伝えた気がするが、嘘です。「キックボクシングをやってみたかったから。」以外なかったけれど、トレーナーさんの熱量に押され、それっぽいことを書かなければいけないと気持ちにかられた、私の負けです。
突然誘われた対人練習でさらに格闘技の面白さを知り、試合を観戦したり、ジム内の大会にも参加してみたり。人を蹴ったり殴ったり(もちろん軽く)、人に蹴られたり殴られたり(当たり前に軽く)、ハイになったり、意識がちょっと飛んだり、憧れた彼女とは結構違う道に進んでしまったけれども、この人生に必要なものが見つけられて、なんて幸せなことだろうと心から思う。
やりたかったことが出来た時点で目標は達成している。健康増進のためだとかダイエットだとか、数値的なゴールもないけれど、ずっと楽しい。あの時の衝撃が住んでいる。これだけあれば私はこの先も続けられる。
special thanks!カワズさん、nさん