「髪の毛は染めてはいけない、ピアスなんてもってのほか。メイクなんてしなくて良い。スカートを履いて、ピンクの似合う姿で。賢くなくて良い、ただニコニコ笑いましょう。家事ができて男の人の三歩後ろを歩きなさい。細くて弱いは可愛くて、守ってあげたくなるような。それこそが愛されるすべて。」
これはなんという呪いだったんだろう?この事象に名前をください。
ずっと纏わりつく違和感に首を傾げながらも、それは正義で、そうありなさいと呪われると、不思議と黒も白になったりした。はっきりと染み付く自分の中のなくならない不快感に、時代がようやく追いついてきたような気がする。書きながら懐かしいやらゾッとするやら。昔なれと言われた、なるべきだった、なれなかった「女の子」はトロフィーみたいに飾られて、綺麗だとは思う。
愛されるための指南書は山ほどあるけれど、愛すること、愛し続けるために参考となるものはあまり見受けられない気がする。テンプレートのような女の子だったならば、愛されていたのか、知る由もないがそれはもうとびきり可愛い呪いの人形だったことは間違いない。
地獄のような場所を出てみると、また別の地獄に落っこちる。メイクをしなさい、恋愛をしないとおかしい、早く結婚しなさい、子を産み育てなさい。地獄巡りも大概にしたいところ。
好きなメイクと髪色で。笑いたくない時は笑わなくて良いし、わざわざ弱くなくても構わない。三歩下がって歩くくらいなら、私が先を進むからついて来て。愛は愛してくれる分だけ返していきます。ひとりでいたって素敵だと思える。数字に染み付く人生設計、喉まであがってくるあの気持ち悪さは、もうどこにもない。それで良い、そうやって進む。呪いは祓った、さて数秒の極楽。
私たちを許してくれる時間はあまりにも短い。だけど今この瞬間が、呪われていた時間よりもずっと強く美しい。誰にも教えず閉じ込めておこう。
強い女(ひと)が好きなのは、呪いにも似た憧れだ。