ソフトウェア開発の文脈で製造っていう言葉を使う人がいる。悪気とかは感じたことがない。ほとんど無意識に、キャリアの最初のころに周りにどんな人がいたかで決まってるんだと思う。ちなみに製造とは、「原料を加工して製品にすること」らしい。
ぼくが初めて作ったソフトウェアは大学院の先輩に向けて作ったやつだった。先輩の研究は大規模なデータを分析するもので、Excelで処理しようとしてExcelがハングして困ってた。
当時のぼくはプログラミングを学び始めたところだったので、いいお題になるくらいの気持ちでデータを入力すると分析結果を出すツールを作ってあげた。
ぼくは先輩と専門分野が微妙に違ったので、先輩にやりたいこと、日々の研究活動の中で分析をするシチュエーションを聞いたり、実際に一緒に実験・分析してみたりしながら、ちょっとずつツールを作っていった。先輩はめちゃくちゃよろこんでくれた。
これがぼくのソフトウェア開発の原体験だ。この過程に「原料を加工する」ステップはなかった。
アジャイルソフトウェア開発とはなにか、自分の知ってるやり方となにが違うのか、という質問を受ける度に、(そんなん知らんがな、、)と困惑しつつ説明を試みるんだけど、相手がなるほど!となったことは一度もない。
中でも、ソフトウェア開発でコードを書く行為をさして「製造」と呼ぶ人にはびっくりするほど伝わらない。たぶんメンタルモデルがぼくとは違う。ぼくのメンタルモデルだと、ソフトウェア開発に「加工する原料」は存在しない。あるとしたら誰かの困ってることとか、想いかもしれないけど。
その人がソフトウェア開発という行為に対して持っているメンタルモデルがコミュニケーションの邪魔をする。