初めての村上隆。カラフルで明るく、笑顔になれる、そんな展示会だった。
有名なおはなちゃん(目を輝かせ、笑顔の顔がついた菊の花)しか知らなかったので絵を描くイメージもなく、現代芸術家とはなんぞやと訝しみつつ赴いたのだが、思いの外感銘を受ける形となった。
大きめな作品が多く、入ってすぐに目に入る洛中洛外図が彼を語る上で欠かせない作品となっており、これまでのキャラクターが散りばめられ、琳派と呼ばれる金箔の背景が目立つ煌びやかな表現は美術史への敬意も感じられた。特別詳しいわけでもないが、ただ絵が上手いとかメッセージ性が強いだとかそんなだけではなく、何に影響を受け、どんなことを考えて制作してきたのかがよくわかる展示方法だった。言い訳、と題して読みづらいカラフルな文字で本人の思考の変遷を作品ごとや時代ごとに辿ることもできたのだが、1文字づつをカラフルにするなんて言われてみればありふれているようだが、実際には初めて見たわけで、なんともやられたなという気持ちだった。
展示の中で最も印象的だったのは、大きな赤い龍だった。横幅15mはあろうか大きなキャンバス一面に描かれた龍の迫力はまるで迫り来る災害を思い起こさせる。そのスペースに至るまでにおはなちゃんやDOB君といった可愛らしく親しみの持てるキャラクターの展示がメインだったために度肝を抜かれた瞬間でもあった。作品としての良さだけでなく展示の流れの上でもダイナミックな変化に異質さを感じつつ、それでいて眺めていたくなるような龍の表情を両脇に垂らされて血のような赤はそのものが持つ迫力を際立たせていた。
珍しくお土産も購入できたし、大変満足だった。芸術への理解が低かったこれまでに比べ、積極的に楽しめる感性を持つことができて嬉しく思っている。美術に関しては、て知識を増やし触れれば触れるほど楽しみが大きくなっていくものだと思っている。こればかりは一朝一夕には行かない。さらにボイスガイドも必須だと改めて思えた。作品の裏にある事情を理解することでより一層愛着が持てるものだろう。
夢はないけれど、評論家にはなりたくないと思っている。やったこともないくせに口だけは達者な大人は単純にダサいので、対等とは言えなくてもどんな苦労があるのか、工夫があるのかを体感として会得することで芸術への理解も深まるのではないかという持論を持っている。芸術表現行為をすることは滅多にない。自分でも取り組んでみたいと心の底では思っていて、どうしてか何もせずにいる。今年のうちに絵の具でも買って描いてみようかな。