感無量。その一言で終わらせたくなくてコンサート帰り、余韻に浸るためAirPods Proで当日のセットリストを聞きながら2駅ほど歩いた。かっこいいとか、センスがいいとか、陳腐な表現しかできない自分がもどかしくなる位、圧倒された2時間。5年前に参加したライブとは国も規模も異なり、ある意味異質な雰囲気を感じ取った。たった一人で魅了する会場は真冬だということを忘れさせるかのように熱気にこもっていた。
会場は円形のステージで360°から観客がを眺める形になっている。その中を縦横無尽に走り回り、回転台で歌い、中央で自由に音楽を作り出す。打ち込みやギターをその場で鳴らし、ループを多用しながら完全なるライブを演出する。この妙義は彼にしかできないと思っているし、コンサートでしか味わえない贅沢な非日常だ。音源の完成度もさることながら、コンサートではピッチが早かったり、ハモリが多かったり、様々なアレンジが随所に織り込まれる。
時折、盛り上がる曲で歌ってと言われても申し訳ない気持ちになった。僕自身彼の歌を空で歌うことができず、会場が広すぎてどれくらいの人が歌っていたのか知らないが、99%の観客が同じような状況だと思う。それでもやはり「Shape of you」では今まで立ち上がらなかった観客も総出で楽しんでいたようで、嬉しかった。
彼が再三言っていたのは、日本でのライブは群を抜いて静かだということだ。彼はそれを楽しみつつ、活用すべくバラードを多めに歌っていた印象だ。シンとした5万人を埋める京セラドームはじっくりとその歌声に耳を傾ける。会場が一体となる共同体感覚を感じていた。巨大なコミュニティともいうべき大勢が一人の人間に集中し、自発的に手拍子をし、時にスマートフォンの光をかざし、心のつながりを体感する。全員が音楽を通して共有している感情に名前をつけることはできるのだろうか。スピリチュアル的に異次元での繋がりがなくてどうやって説明がつくのだろうか。
幸福を感じすぎてまさに震えていたわけだが、やはり非日常を味わえるコンサートは悪習慣とならないくらいには行きたいと改めて思った。時代の潮流に抗いながら自分を形作る日常を大事にしていく。たくさんの障壁にぶつかるだろうが、その度瞼の裏に思い浮かぶのは今日のような幸せな日で、思い出しでは喜びを感じるのだろう。まだまだ世界には未知の感動が溢れているんだから楽しみでしかない。