仕事をしていれば誰でも昇進したいだろうし、なるべく早くより強い肩書きを得たいと思うだろう。若いときにはとくに、早く昇進するのが優秀さの証しのように思うし、若いうちからどんどん昇進していく人に憧れがあったりするはずだ。昇進すればするほど、仕事の裁量の幅も貰える給料も増えていく。
外資なんかだととくに、若くても機会をつかめば転職などのタイミングでどんどん肩書きを上げていくこともできるし、ガツガツ出世競争をしていくような空気感もある。
自分も、機会さえあればどんどん昇進して肩書きを強くしていくのがいいことだと漠然と思っていたが、最近いくつか悲しい事例を経験するようになって違う考えを持つようになった。
まず良く遭遇するのが、比較的若い人の例で、全然シニアな実力がなくジュニア相当が妥当なレベルなのに、転職のマジックでシニアの肩書きで入ってきてしまったような人たち。肩書き上はシニアなので、ジュニアのように扱うこともできず、こちらとしてもある程度自律して仕事を進めていってくれるのを期待するしかできないのだが、明らかにパフォーマンスがシニアのレベルを満たしていない。
そういう若いのに分不相応の肩書きを得てしまった人に何が起こるかというと、シニアなのでこちらとしてもジュニアのように教育を手厚くしてあげることもできず、しかし自力で肩書きに見合うだけのパフォーマンスを挙げることもできない。傍からみて完全にキャリアの袋小路に陥ってしまっている。いくつかチームを転々とした上でPIPみたいなものの対象となり、結局は会社を去ってキャリアをリセットするしかなくなる。
もう一つは、シニア相応だった人が少し背伸びして、必死に上司にアピールしてひとつ上のポジションに無理やり昇進させてもらうような事例。元々のポジションでせっかく仕事ができていたのに、ひとつ上の役割にはまだ準備ができていなかったせいで、必要なリーダーシップを十分に発揮できず、結局肩書きだけはキラキラしているのに社内で何をやってるのかよく分からない人になっているケース。これはDistinguishedみたいな技術職の最上位でもたまに見る事例かもしれない。
要は、私たちが観測しているのは単にピーターの法則なのかもしれない。いずれにせよ、キャリアアップのために少し自分をストレッチして、コンフォートゾーンからはみ出すチャレンジを続けていくのはいいことだが、それが己を知らずに極端に自分のキャパシティからはみ出てしまうのは、誰にとっても幸せなことではない。