友達が誘ってくれて観に行って来たのだが、なんだかものすごい映画を観てしまった……すごい。すごい。
自殺した女性がマッドサイエンティストに勝手に胎児の脳を移植されて蘇る。体は大人の女性、脳は赤ちゃんの主人公が、世界に触れながら知性や人間性を獲得していく、一風変わった成長譚である。
子供のように知ることや経験することに貪欲で、大人が社会生活で慎むような性衝動や嗜虐性などのプリミティブな欲求もまるで包み隠さない。その清濁合わせ持ったピュアネスでこの世の中の不条理や愚かさ(Poor Things)と体当たりしながら自分自身を獲得し、やがて最強生物に成長してゆく主人公。彼女と関わる人間は皆、その唯一無二な魅力に振り回されて、人生の道を踏み外していくという見事なファム・ファタールでもある。
そんな全く新しいタイプのヒロインに魅了されながら、無垢とは、成熟とは、知性とは、身体性とは何だろうなどと考えさせられる。
純文学みたいなテーマなのに、エンタメ性も高い。2時間半と長い映画だが、テンポ良く人物のキャラも立っててストーリーも明快、観てて全く飽きさせない。もしエログロ18禁でさえなければ、オモロイ映画として普通に人に薦めることができたかもしれない。
映像や音楽も美しい。舞台が19世紀後半という設定みたいなのだが、単に昔の風景ではなく、空にゴンドラが浮かんでいたり、一見馬車に見えるが馬の首だけつけた車が走ってたり、まるでAIが描く絵みたいな、新しさと古さ、美しさと奇妙さが絶妙なバランスで調和している不思議な世界観だった。主人公が着ている衣装も奇妙かわいい。音楽も奇妙かわいい。エンドロールも奇妙かわいい。全体的なトンマナの統一感が気持ちよくて、あの独特な映像世界にしばらく浸っていたくなる。手術のシーンは仮面ライダーだった。
なお、大変18禁です。エロいというより生々しいです。そんなに?そんなに見せるの?もうそのシーンいいよ……もういいから……みたいな感じなので、一緒に行く人によっては気まずい雰囲気になるかも。