最近 (?) Audible もいろんな本が充実してきていて、集中力が終わっててもはや一冊の本を読み切ることがなかなかできなくなっているわしも、楽して「ながら」で上質な情報に触れることができて助かっている。
もちろん Audible で読んでいるので文字で読むより雑になってしまい、精読というわけにはいかないが、逆にその気楽さも良い。Audible で雑に聴いて興味を惹かれたら文字の本でもちゃんと読んでみるというパターンもある。
先日は、アメリカ政治学者の前嶋和弘先生著の『キャンセルカルチャー: アメリカ、貶め合う社会』という本を読んだ。
「キャンセルカルチャー」をキーワードに、現代のアメリカの深刻な右派 vs 左派の分断について、今起こっている現実を教えてくれる。今やこの分断はアメリカだけでなく世界中に広がっており、我が国も全く他人事ではない感じがする。
特に興味深かかったのは銃に対するアメリカの特殊な考え方だ。我々の感覚からすると個人が銃を持つなんて怖すぎてあり得ないのだが、アメリカは歴史上、個人が銃を持つことによって自由と独立を勝ち取ったという流れがあり、銃を所有するということはアメリカ的な民主主義の一部なのかもしれない。銃規制反対派が主張する「銃所有によって犯罪が減った」というのは、実際の数字を見るとあながち嘘とも言えないらしいが、それよりも景気など他のファクターの方が相関が高いのではないかというのが、前嶋先生の見解であり、まあそうだろうなーと思う。個人の銃所有において、最もよく使われる用途が自殺だというのもこれまたつらい。
またSNSが煽る分断についても触れられている。この本は数年前の本なので、まだTwitter が X じゃなかった頃の本なのかもしれず、今現在はもっと問題が深刻化していそうだ。2010年代あたりまでは、個人が自由や知を手にする革命的な手段としてもてはやされたインターネットやSNSだが、もはやいつの間にか民主主義や協調とはだいぶ相性が悪くなり、すっかり格差や分断を煽る存在になってしまったというのがなんとも皮肉だ。Webサービスの一端に関わる人間として希望は捨てたくないものだが、この流れは逆らい難いものであるように感じるし、個人的にもこの流れに対してどうしたら良いものか、まだよくわからないでいる。
深刻な分断の現実を描きつつも、この痛みの先には、アメリカという国が本来目指した理念を体現する、もっと自由と多様性のある社会が待っているはずと本書は明るく希望のある形で締めくくっている。前嶋先生らしいよい本だなあと思った。
前嶋先生は、たまにダースレイダーさんとの対談動画とかで拝見するのだが、アメリカの話が面白いのはもちろんのこと、語り口がソフトでとてもいい人そうで、どんなことでもとても楽しそうに話してくれるのが好きなのだよな。