💃『セクシー田中さん』のこと

taea
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公開:2025/9/9

この記事を読んで、夫と「原作者がこういうスタンスなら、映画も作りやすいよねえ」みたいな話をしてたら、ふと、『セクシー田中さん』のことを思い出してしまった。

漫画『セクシー田中さん』がテレビドラマ化された際に、原作者の意思が蔑ろにされた結果、原作者さんが自死を選んでしまったという、言わずと知れた、数年前の悲しい事件だ。

恥ずかしながら自分は、この事件があった後、『セクシー田中さん』の漫画を全部読んだ。作者の死の後に興味本位で作品を見てハマってしまうのは、作者にとても失礼というか、後ろめたいし申し訳ない。できるならご存命のうちにファンになりたかった。

『セクシー田中さん』はとてもとてもいい漫画だった。自分が今まで読んだ漫画の中でも、かなり上位に入るくらい好きな漫画かもしれない。登場人物はみんなどこか弱さや葛藤やズルさを抱えながら、それでも自分らしくあろうと一生懸命生きていて、悪い人がいなくて、読んでいて暖かい気持ちになって、登場人物全員が愛おしくなってしまうような漫画なのだ。

作者の芦原妃名子先生は、この漫画のキャラクター全員を、とても愛し慈しんで描かれていたんだろうなということが、想像できた。そんな思いの深い方だからこそ、ああいう素晴らしい作品を描ける方だからこそ、ああいう結末になってしまったのかもしれないということも想像してしまって、なんというかただただとても悲しかった。

『セクシー田中さん』ね、本当にいい漫画なんですよ……なんかちょっと刺激的なタイトルで損してる感じがしなくもないんですが、テイストとしては羽海野チカ先生の作品にちょっと近い雰囲気の、ちょっとほのぼのとしてクスッと笑えつつ、でも胸に刺さる人間ドラマです。本当にこの素敵な漫画を最後まで読めなかったことが、とにかく悲しくて、最終巻を読み終わった後はなんともやりきれない気持ちになった。

もっとも、例の事件については、背景にはおそらく構造的な問題があって、誰か特定の個人を責めたりするのも少し違うんじゃないかと個人的には思っているんだけど……。ちなみにドラマの方は観たことないです。

とにかく、漫画『セクシー田中さん』はすごくいいんだよ、そしてすごく悲しかったということを、今更ながらふと書いておきたくなったのでした。まあ、少し時間が経った今だから書ける……というのもある。騒ぎの渦中では、あまり触れたくない話題ではあった。


冒頭の記事のカズオ・イシグロ氏については、名作SF小説『わたしを離さないで』がTBSでドラマ化されていて、それがとてつもなく良いドラマだったと思う。綾瀬はるか・三浦春馬・水川あさみの3人が主役で、どの方もとても素晴らしい演技をしていて、映像も美しかった。

人間に臓器を移植するために生まれたクローン人間たちの生涯を描く、ものすごく重い作品で、ドラマは本当に観ているだけで自分の臓腑に重くズドーンと来るような、観てて本当に辛いんだけどすごく良くできており、最後まで夢中になって観た。あんなに観てて重い気持ちになるドラマは他に経験したことがないかもしれない。でもとてもいい作品なので、精神にちょっと余裕がある時に、観たことない人はぜひ……。

(同じTBSドラマの『白夜行』『義母と娘のブルース』『JIN - 仁』などと同じ森下佳子氏による脚本。おそらくかなり共通したスタッフの制作チームが作ってると思う。あのチームは本当に良いドラマを作るんだよなあ……そして綾瀬はるかの使い方が上手い……。)

ドラマにハマった後に、カズオ・イシグロ氏の原作小説の『わたしを離さないで』を読んだのだけど、ドラマに比べると意外とドライな感じでたんたんとしており、それはそれでドラマとは違った良さがあって素晴らしかった。ドラマの方が色々と生々しくてウェットです……。んー、ドラマと小説、どっちの方が好きかなあ。悩むなあ。どっちもそれぞれすごくいいんだよなあ……。

(確かイギリスで映画化もされてるはずなんだけど、それはまだ未視聴……な気がする。いや、観たような気もする……記憶が……)

@taea
🐶 イマジナリーおもちと暮らす無職