👧噂の「ハピかわ」本を読んだ

Amazon.co.jp: 自分をもっと好きになる 【ハピかわ】かわいいのルール : はぴふるガール編集部, 双葉陽: 本

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ちょっと前に流行ってた例の本を読んだ。自分がうまくできなくて、誰かに教えてほしかったことがことごとく網羅されていてすごかった。自分が読むべき本であった。

いい感じの立ち方、座り方、笑い方、話し方、伝え方、片付け掃除、身だしなみなど、人の社会生活における様々な振る舞いをより良くする方法を、小中学生の女子向けにわかりやすく解説している。それが結果的に、当たり前の社会生活を上手にできない、いわゆる生きづらい大人にも寄り添った形のアドバイスにもなっている。

なるほど、ここに書かれているような行動ができたら、いくぶん自信を持って生きることができるかもしれない。「それができたら苦労しない」などと言う余地がないくらい、細かい事例を挙げてこういう場合はこうすると良くて、これはNGというのをわかりやすく書いてくれているから、真似して改善もしやすい。これだけ噛み砕いて書いてもらったら、もうあとはやるかやらないかだけなのではないか。すごい……ある意味逃げ場が無いぜ。

「ガサツ」をやめたい

今さらではあるのだが、この本を読んで、自分のよくないところは「ガサツ」という言葉に集約されているのではないかと気づいた。わしはガサツである。ひとつひとつの動作や思考が丁寧でなく投げやりでいい加減なのだ。

ガサツは本当に良くない。ガサツだと無神経な言動で他人に嫌な思いもさせるし、やりたいこともうまく遂行できないし、見た目もだらしなくて信用を失うし、本当にいいことがない。

ガサツと雑もまた微妙に異なると思う。身近な例で恐縮だが、うちの夫はまあまあ雑だけどガサツではないと思う。例えば、夫は料理をそんなに丁寧にやるわけではないが、使ったあとのキッチンはきれいに片付いており、使いやすい状態を保っている。一方私は気持ちだけは結構頑張って料理をするが、使った後のキッチンはちょっとしたディザスターで、床は水びたしだし調理器具はそのへんに山積みになる。生活の様々な面にガサツさはこういう形で現れる。

ガサツは細かいことを気にしなくて大らかかと思いきや、全くの逆である。自らのガサツさが招いた余裕のない状況により、何一つ上手くできていないのにいつも神経質にセカセカして追い詰められたり混乱したりしているので、他人にも自分にも厳しい。ワァ、ガサツ、本当にいいことがない。

自分がガサツなのは自分が生来そういう性質を持った人間だから仕方ないとか思っていたフシが大いにあるのだが、もしかすると、ガサツではなさそうな振る舞いを真似してくことで、ガサツな人間を脱することができる可能性があるのではないかと、この本を読んでいるうちに気付いた。

例えば、恥ずかしながら、私は今までパスタをフォークでうまく巻いて食べるのが苦手だったのだが、ハピかわ本に書いてあったやり方を今日真似してみたら、なんとうまく巻けたのだった。40代後半にして初めて、パスタを上手く巻くことができた。感動的だ。少なくともパスタを食べることにおいては、ガサツさが減っていくぶんお上品になったということになる。

このように自分にはもともと能力がなくてできないと思いこんでいるが、単に上手いやり方を知らないだけで、具体的なやり方がわかれば案外上手くできるというような事は、まだまだたくさんある気がする。

丁寧に座ったり立ったり、靴を脱いだら揃えたり、物を使ったら元の場所に戻したり、魚をきれいに食べたり、適切な話し言葉や伝え方を一つ一つ選んだり……、そういったガサツでない生活をする方法をハピかわ本は細かく具体的に教えてくれる。試しにここに書かれたことを実際真似してみると、なるほど気分が良いし効率が良い。生きやすさとは、結局のところこういう基礎的な生活スキルの積み重ねなのかもしれない。

「ステキ女子」みたいな言葉はモヤモヤする

この本に書いてあることの多くは、女子男子に関わらず知っていると便利で生きやすくなることだと思う。便宜上、男女の区別があったほうがよりキャッチーに刺さりやすくなるのは理解できるが、「ステキ女子計画」みたいな言葉を見るとウッとなって素直に受け入れられない部分がある。自分が子供の頃や若い頃は特に、女性らしさを求められることが嫌で避けていた。今は昔に比べると偏見の少ない世の中になったと思うが、こういうのを今の子供に読ませるのは、嫌なジェンダーバイアスを再生産したりしないのかはちょっと心配になる。この本に書いてあることがよくできている「ステキ男子」もたくさんいるじゃないですか。

でもまあ「ステキ女子」「ハピかわ」という言葉のキャッチーさはすごい。言いやすいし言いたくなる。キャッチーなバズワードは強い訴求力を持つ一方で、現実を単純化、矮小化してしまいやすく、しばしば諸刃の剣になるが、これもまたそういう一例なのかもしれない。

みんなが健全な人格者である世の中は良いものなのか？

これはいわゆる自己啓発的な本を読むと、多かれ少なかれ毎度思ってしまうことではあるのだが、自分個人としては素直にアドバイスを取り入れて、現実の生きづらさを少しでも解消してより幸せな人生を目指していくのが得策だと思うし、そのための方法をわかりやすく教えてくれる存在はとてもありがたいと思う。私はこういうものをなるべく素直に受け入れて自分のライフをチェンジングすることに使いたいと思う。

一方で、みんながこんなに立派でハピかわな人間にならなきゃいけないんですかね？みたいなこともいつも薄っすらと感じながら生きている。仮に、社会を構成する全員が健全で清潔で、他人に迷惑や不快感を与えず思いやりがある振る舞いをするような世の中は、やっぱり少し薄気味悪いディストピアSFなんだよな。力強い規範を示されると、そこから外れた存在が排除される可能性を想像して怖くなってしまう。

多様性とは、自由とは、愚行権とはなんだろうみたいなことを考えてしまう。難しい。少なくとも私自身はこういう本を受け入れない人や、この本の模範から外れたハピかわでない存在も受け入れ、できれば愛でられるような人間になりたいと思う。（20年前の自分はこの本を到底受け入れられなかったと思う。いや、10年前でも無理かも。）そういった他人への寛容が、ひいては自尊心や自己肯定感を守ることにも繋がるような気がしている。

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とまあ、モヤモヤ考える部分もあれど、読んで良かった。自分にとっては「こんまり本」とか『7つの習慣』以来かもしれない、ライフチェンジングな本でした。たびたび読み返して「ハピかわ」を自分のものにしていきたい。