📖 『なぜ、難民を受け入れるのか──国益と人道の交差点』を読んだ(Audible)

taea
·
公開:2026/2/6

難民とは何か?難民をとりまく現実について、様々な角度のファクトを交えて丁寧に解説された、結構長く、硬い本である。Audibleでなければわしは読みきれなかったかもしれない。きちんとしているがとてもわかりやすく噛み砕かれている本だ。とてもきちんとした本なんだけど、わしのようなふわっとした人間がAudibleでふわっと読んでるので、ふわっとした感想文になってしまって申し訳ない、と予防線を張っておきます。

この本は Audibleの中で聴ける、ライムスター宇多丸さんのポッドキャストで触れられていたのがきっかけで、興味を持って聴いてみたのだった。このポッドキャストや、それを紹介してくれているぬまがさワタリさんのエントリで触れられているAudibleをいくつか聴いているが、どれも良い。


本の前半は「難民とは何か?」について多くのページを割いて触れられている。難民の定義や認定は難しい。わしは難民のことを何にも知らなかったし、これを読んで何にもわかっていないということがわかった。

基本的に「本国に帰ると迫害される可能性があり帰れない」という状態が難民らしい(多分)のだが、その解釈がケースバイケースで違って難しいようだ。

また、後進国の方が難民受け入れに対して(意外と?)柔軟な傾向があるらしい。明日は助けてもらう身かもしれないという危機感もありつつ、難民受け入れが労働力や国力の確保に繋がったりと直接的な実利もあるという。

中盤は、我が国日本の難民受け入れ体制について触れられている。薄々気づいてはいたが、我が国は難民後進国で、国際的にはかなり恥ずかしい感じのようだ。お金は出すが受け入れはほとんどしないという長年の態度は「ジャパニーズソリューション」(?みたいな感じ……だが、これで合ってたか自信ない)と呼ばれて国際的に揶揄されているらしい。かと思えば、ウクライナ避難民支援だけはなぜかやりすぎなくらいに手厚いサポートがあり、受け入れ基準が緩すぎることで逆に問題が起きたりもしていて、よくわからんことになっているらしい。そりゃあ、理不尽な酷い目にあっているウクライナの人たちには助かって欲しいが、そこだけ異常に手厚くて他と差がありすぎるのは問題だし謎だよなあ。

後半では、難民受け入れに比較的柔軟なイメージのある北欧各国の政策に触れられている。難民の増加に合わせて、右派ポピュリスト政党が台頭して、排外主義が盛り上がってしまうのは世界中どこの国でもある現象のようだ。筆者は北欧の中でもノルウェーの難民政策は比較的良質だと評価しているようだ。ノルウェーにも例に漏れず、右派ポピュリスト政党が古くからあるが、ノルウェーは多党政治で連立政権が立つことが多く、右派政党ともいえどもあんまりとんがった事も言えず、他党とバランスを取った政策を合議していかなければならなかった結果、わりかしいい感じの妥協点に収まっているっぽいというのが、個人的に印象的だった。

二大政党制はシンプルでいいなあと自分もかつてはちょっと思っていたが、結局のところ、色んな考え方の人たちをとりまとめながら、妥協や合議を繰り返して少しずつ進めていくのが、結局一番民主的で安全なのかもしれないなって、昨今の我が国とか国際社会とかを見てると思うようになってきた。

この本のサブタイトルにある「人道と国益の交差点」という文が好き。そうなんですよね、人道的であることは大切でそれが原点なのだけど、人道だけだと難しい。利益や経済が回っていかないと、一定の誰かの善意や犠牲に甘える形になってしまいがちだし、そもそも人によって何が正義か、人道的かも解釈が異なるのも話を難しくしてしまう。国益という言葉はなんかちょっと物騒なニュアンスもあるが、やはり人道に実利がきちんと伴っていることが良い社会を持続可能にするのだと思うし、そういうシステムが作られていくと良いのだろう。

企業のCSRや、はたまた個々人の人間関係などもその縮図に感じる。利他的なことをすると、良い社会的評価が得られ、それが回り回って実利として帰ってくる。そのサイクルがうまく回っているのが健康な社会という感じがする。

まあ、難しく考えなくても、自分と関わると幸せになれると他者から思ってもらえることが決して悪い話ではないのと同じく、この国と関わると幸せになれると思ってもらえることが、より良い国際関係やひいては国益につながる。逆にこの国と関わりたくないと他国から思われてしまうことは、あんまりお得なことじゃないよねというシンプルな話にも思える。仲良くなりたい人だと思ってもらえるとうれしいし、行ってみたい国だって思われるとうれしいよね。

宇多丸さんのポッドキャストでも触れられていたが、この本は硬い本で抑制的な語り口調でありながら、ところどころ筆者さんのエモが漏れ出ているところが、また良かった。このAudibleを読んでる女性の声もまた良いのだ。まさに今読まれるべき本であると感じた。読んでようございました。

今まで難民についてはよくわからず、たまになんとなく UNHCR に募金などはしていたが、これを読んだことで難民についてほんのちょっとだけ解像度が上がったので、自分なりにできることを少しでも主体的に考えていけたらよいなあと思った。

@taea
🐶おもちと暮らす人間