母のブログが20年間続いている話。

親孝行できたかなと思うことがひとつだけある。還暦を迎えた母にブログの使い方を教えたことだ。若いころに広告カメラマンをやっていた母はいまでも趣味で写真を撮っていて、母が書いた文章を父が添削する形で日々の暮らしをブログにアップするようになった。

わたしはといえば、ブログに飽きてしまい、10年以上も前に更新をやめてしまった。その後は、ツイッターやインスタなどのSNSに移行して、日記的なものは書かなくなった。

母はその間、現在も「庭食亭日記」というブログを更新しつづけている。なんと、今年の8月でブログを開設してから丸20年になる。80歳になった今も、写真を添えて日々のあれこれをブログに綴り続けているのだ。わたしは先日、そのことに気づいて驚いた。母のブログは、2000年代に還暦を迎えた市井の女性が残す貴重な記録であり、まさに彼女の暮らしが刻まれた生活史だ。

「庭食亭日記」より
「庭食亭日記」より

20年前、わたしは28歳だった。過去記事を読み返すと前の同棲相手の写真がふいに現れて、当時の禍福がよみがえってきたりする。母のブログには、わたしの人生の変化も記録されている。ブログを辿っていくとわたしの結婚式や孫との初対面の様子が書かれていて、その孫もこの3月に小学校を卒業する。

母は、ブログのネタになるものを日々探している。それが生きがいになっているのだろう。元々チャレンジ精神が強い人なので、ブログがそれをさらに刺激したのかもしれない。短パンやのれんを作ってほしいとオーダーすると手持ちの生地でさっと縫って送ってくれる。そしてそのこともちゃんとブログにアップする。

「庭食亭日記」より
「庭食亭日記」より

これはもはや子々孫々に伝えるべき上村家の歴史書と言っても過言ではない。ここまで来たらもう20年、100歳まで元気でブログを更新し続けてほしいと願う。

@tai
上村朔之助(うえむら さくのすけ)…1975年生まれ。兵庫県芦屋市出身。日本大学芸術学部中退。映像ディレクター、小鳥ものづくり集団「pico」、専業主夫などを経て、「ぴよぴよホームズ」を設立。小鳥物件の譲渡やイベントの開催、鳥グッズの販売などの事業を展開中。インコ歌人、詰将棋作家、ボウラーとしても活動。お問い合わせはXのアカウントまで。 @taikichiro