青崎有吾『地雷グリコ』を読了した。高校生が主要なキャラクターで、ギャンブル性のあるゲームでバトルをする連作短編集だ。
ギャンブルと言っても掛けるものは他愛のないものだ(後半以降大金をやりとりする)。表題作の地雷グリコでは文化祭の出し物で使う場所、2作目はカフェでの出禁を解いてもらう、3作目は主人公と因縁のある敵の情報、4作目からギャンブルとしてのゲームの面が強くなり高額の金が絡み、5作目で大金を掛けて主人公と因縁のある敵と対決する。
主人公は射守矢真兎、高校一年生、物語は中学からの友人鉱田の視点がメインで語られる。状況に応じて三人称で射守矢自身や対戦相手の心情や思考が綴られるなど複数の視点になる。これは単純だがルールに一捻りのあるゲームで対決するからだ。対戦相手と射守矢との腹の読み合いがこの作品の読みどころになっているから、対戦相手の視点がすごく面白いのである。解説役がゲームの実況、対戦者の取った“手”の解説、視点移動でプレイヤーの思考や分析が語られるが、どんな結果が待ち受けているかは一緒に考えないとわからないようになっている。何を選ぶかは提示されているが、プレイヤーの意図は伏せてあるというか。一捻り加えられたゲームの落とし穴を見つけて、それをどう利用するか、を技巧的に組んでいる。
作中で登場するゲームはありふれたもので子供の遊びに一つルールを足したり、ペナルティを加えたり、とても面白い。最後の「フォールームポーカー」あたりになってくると畳み掛けてくる推論についていけなくなったが、単純でありふれたゲームに真剣に挑み、大金の裏にナイーブな心が掛けられているのが良い。大変面白かった。