部活、受験をはじめ、あなたはこれから、数多くのことに一生懸命に打ち込むと思います。そして、嬉しい気持ちも、悔しい気持ちも、多くの感情が流れ込んでくる。
頑張ったのに、努力したのに、欲しかった結果に手が届かないことも、結果が手に入るかわからなくて、スタートを切れないこともあると次第にでてくるでしょう。
パパも一生懸命打ち込んだのに、欲しかった結果が得られなかったことがあります。
とても悔しかったけど、無駄なことはひとつもなかったです。
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パパは、小学校2年生から野球をはじめてね、高校では甲子園目指して頑張っていました。やっぱり、野球をやってたら、甲子園は行きたいよね。
でもね、諸事情があって、甲子園に行けそうな学校にいけなかったの。地元の公立高校しか選択肢がなくてね。たいていの大会で一回戦負けするような、決して野球が強いと言える高校ではなかった。
ただ、甲子園には行きたかった。じゃあどうする?ってなったら、甲子園目指して頑張るしかないよね。
高校一年生の時は、とにかく玉拾いをして、終わったらトレーニングをしてを繰り返した。高校二年生から徐々に試合に出れるようになってね、すごい先輩たちがいたんだけど、あるときコツを掴んで、ホームランをコンスタントに打てるようになって。夏の大会ではレギュラーを勝ち取って、その大会ではホームランを打ったり。
レギュラーになって、活躍したから、当時はとても嬉しかった。ただ、結局一回戦負けだった。レギュラーになって、活躍するのに必死で、甲子園忘れて喜んじゃってたことを悔いたのを今でも覚えてる。
高校三年生になって、パパの最後の一年、このままでいいのかと思うようになった。そして、パパと同じ、いやそれ以上に甲子園を目指すために本気になっている仲間もいてね。とにかく本気で甲子園を目指すためにどんどんアクションした。
一回戦負けする練習をしても甲子園にいけない、だから監督に練習メニューを考えてやらしてもらったり、あらゆる本を読んで効率的なトレーニングを探しては実践してみたり。パパたちよりも弱小と言われていた高校に負けた時には、何時間もお互いの悪いところを言い合って、改めてチームとしてどうあるべきかをディスカッションしてみたり、元旦朝6時に集まって、鉄の棒でゴルフボールを打ち続けたり。
走ったり、投げたり、打ったり、ずっと繰り返して。本当に甲子園に行けるのかもわからない、ただとにかくやるしかないと、多くの時間を野球に捧げた。
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結果はというと、ベスト8で負けてしまって、甲子園いけなかった。延長戦で、守備で見方が投げたボールが相手に当たってそれがきっかけで得点されて。ただ力が足りなかった。パパが一生懸命打ち込んだ野球は、それで終わったわけ。
当時は悔しかったし、悲しかったし、泣きまくった。ただね、少し経った時に、はじめて野球やっててよかったって思えたのよ。10年以上やってて、はじめて。
あの時の感情をうまく表現ができないんだけど、ボクシング名作漫画の「あしたのジョー」の最後に、主人公のジョーが負けたのに、真っ白になって、笑顔だった。その笑顔の意味が、すごくわかる。
ぜひ読んで欲しいんだけど、パパもね、多分真っ白に燃え尽きられたんだろうなって。一生懸命何かに打ち込んで、もうこれ以上ないって思えたら、それが結果どうなろうが、多分笑顔になるんだろうなって。そういう体験がひとつでもあると、嬉しくもあり、人生を豊かにしてくれる。
また、今でも、当時の話をアテにしたり、しなかったりで、当時のやつらと、全員じゃないけどたま飲んでる。かけがえのない仲間たち、宝物が、振り返ればその時手に入ったんだなと思う。
もちろん、続くことがあったら悔しいから次に活かすとかあるんだろうけど、高校野球は3年。それで必ず終わるわけでね。
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あの夏からもう15年以上が経過していて、今振り返ると、あの時の体験が原点になってたりする。
パパは経営者をしているんだけど、「美味い、酒を飲む。」という理念や「15年で解散する」という解散を決めて経営してて、ちょっと変わりもんに思われてたりする。
でも、パパはやっぱり、高校野球の時のように、限られた期間の中で、甲子園にいくみたいな、そういうのが好きでね。大人になったらもう甲子園はないから、自分たちで決めないといけないんだけれども、期限を決めて、自分たちで決めた何かに向かって一生懸命走ってたら、かけがえのない仲間たちや、人生を豊かにしてくれる体験や、とてつもない美味い酒が飲めるんじゃないかなって信じてる。だから、「美味い、酒を飲む。」という理念を掲げ、「15年で解散する」という期日を設けたりしてる。
手にしたいのは、地位でも名誉でも金でもなく、体験。それは、甲子園に行けなかった野球が教えてくれたこと。
そう考えると、甲子園に行けなかったけど、悔しい思いをしたけど、無駄になにひとつなってない。だから、一生懸命打ち込んだものは、花開かなくても、無駄にはならないと、思ってます。
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ただ、ひとつだけ、もし真っ白に燃え尽きられるくらいやり切れてなかったら、多分今のパパみたいにはなってないのでは、と思う。
もし一生懸命頑張ったことが、無駄になることがあるとしたら、それは一生懸命頑張れてなかったときじゃないかな、と。
だから、とにかく悔いを残さないように、一生懸命頑張りなさい。そうすれば、やって良かったと思えるし、気づけば多くのものが得られていると思いますよ。
36歳 9ヶ月25日