サービス開発の現場では、画面を仮で作成する際に、まだ内容が決まっていないテキスト部分に「ああああああ」や「テストテスト」といった文字を入れることがあります。開発中であることを示すために便利な方法にも思えますが、これはできる限り避けるべき習慣です。
なぜなら、そのような文字列は、本来のユーザー体験を正しく再現できないだけでなく、重大なリスクを引き起こす可能性があるからです。
ユーザーに見せるものではなくなる
たとえば、「このサービスの説明文にはどんな文が入るか」を確認したいとき、本来であれば、ユーザーにとって自然に見える文章を入れて試すべきです。しかし、そこに「ああああああ」と入れてしまうと、見た目も意味も実際の利用シーンとはかけ離れたものになります。
そうすると、レイアウトが崩れていることに気づかなかったり、文字数制限の設計が適切でないまま進んでしまったりすることがあります。見た目の違和感に気づけないままリリースされてしまえば、ユーザーが「なんだか使いにくい」と感じる原因になります。
テストのつもりが、気づけば本番に
さらに大きな問題は、開発中の仮データが、うっかりそのまま本番環境に出てしまうケースです。
実際に、「ああああああ」や「ダミーダミー」のような文字列が、一般ユーザーに公開されているサービス上に表示されてしまい、SNSなどで取り上げられてしまうケースもあります。
そうなると、「このサービスはちゃんと作られていないのでは?」と疑問を持たれ、企業やブランドへの信頼を損なう可能性があります。つまり、開発者の小さな習慣が、ユーザーの信頼や体験に大きく影響してしまうのです。
本当に大切なのは「使う人の目線」
私たちがつくっているサービスは、すべて最終的には「誰かに使ってもらう」ものです。そのとき、サービスの見た目や言葉の印象は、使い勝手と同じくらい重要です。
ユーザーは、表示された内容からサービスの意図や品質を感じ取ります。だからこそ、仮の状態であっても、「こういう風に使ってほしい」「こういう情報が入る予定です」という意図が伝わるような、自然な文や表現を入れておくことが大切です。
生成AIを活用しよう
とはいえ、「毎回きちんとしたダミー文を考えるのは面倒だ」と感じる方もいるかもしれません。
そこで、最近ではLLM(大規模言語モデル)を活用して、自然な文章を自動で生成する方法があります。たとえば、ChatGPTのようなツールを使えば、以下のように指示するだけで、すぐに適切な例文を作ることができます。
30〜50文字程度で、旅行に行った体験談のダミー文章をできるだけ作ってください。
このようにすれば、「ああああああ」のような文字列を使う代わりに、数秒で自然な文を用意することができ、ユーザー目線のテストにもなりますし、本番にそのまま載っても恥ずかしくない状態になります。
最後に
「ああああああ」というダミー文字を使ってしまうことは、ちょっとした作業の一部に見えて、実はサービスの品質やユーザー体験に深く関わる問題です。
私たちは、ユーザーのために良いサービスを届けることを目的に日々開発しています。その中で、「仮の状態でも本気でつくる」姿勢は、ユーザーの信頼を得るためにも、とても大切なことです。
みなさんのちょっとした意識の変化が、サービス全体の品質を底上げし、ユーザーにとって気持ちのよい体験を届けることにつながります。どうか、次からは「ああああああ」ではなく、意味のあるダミー文を――そして、LLMの力を借りて、よりよいものづくりを一緒に進めていきましょう。