私の町では、二月の月神様にはかまくらを作る。
一月の月神様をお見送りしたら、広場にある一月様のおうちを急いで片付けて、今度はかまくらを作り始める。
二月様は小さいから小さなかまくらでいいのだけど、丁寧に作る。
祖父はかまくら作りの名人で、私も六つの頃から一緒にかまくらを作っている。小さい頃は祖父の邪魔にしかなっていなかったけど、今では多少なりとも役に立っているのではないかと思う。
かまくらの入り口には木の扉をつける。これは毎年同じもので、森や動物たちの美しい彫刻がしてある。
二月様は毎年、「今年も素敵なかまくらだね」と褒めてくださる。
でも今年は暖冬で、かまくらを作るのも維持するのもとても大変だった。
みんなで少ない雪をかき集めて冷凍庫に貯めた。どこの家もお店も会社も、冷凍庫には二月様のかまくらのための雪が入っていたくらいだ。
かまくらの壁はいつもより厚くして、周囲を氷で囲い、さらにその上に、日光が当たらないように屋根をかけた。
それでもかまくらは融けてくる。町の人々は毎日新しい雪を持ち寄り、祖父がかまくらを補強する。
二月様は「ありがとう」とおっしゃるけれど、暖かいのがお身体によくないのか、浮かべた微笑みはなんとなく元気がない。
祖父は「暖かい冬が続くようならば、今の二月様はもういらしてくださらなくなるかもなぁ」と言う。
そしてもっと寒い土地の月神様になるのだ。
この町はといえば、別の二月様がいらっしゃるようになる。
月神様というのはそういうものだ。
分かってはいるけれど、私は悲しい気持ちになる。
「私は今の二月様が好き」
そう言うと、祖父は優しく私の頭を撫でてくれた。