セーター

takato
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 僕の彼女は冬になるとひと月ほど会えなくなる。仕事が忙しいからと言って。

 その繁忙期が終わり会えるようになると、彼女はとても痩せてしまっている。

 心配する僕に、「大丈夫、前が太り過ぎだったのよ」と彼女は微笑む。

 そして手編みのセーターをプレゼントしてくれる。「ストレスが溜まると編み物したくなるのよね」と言いながら。

 彼女のくれるセーターは、ふかふかでとても気持ちがよくて、ずっと触っていたくなる。

 春と夏と秋は彼女とふつうに会うことができる。

 ふたりで色々なところに遊びに行ったり、家でのんびりしたり、たまには喧嘩したりしながら過ごす。

 そして冬が近づくにつれ、彼女はだんだんとぽっちゃりしてくる。

 ころころしてきたなと思う頃になると、「仕事が忙しいからひと月くらい会えなくなるけど、心配しないでね」と言って僕のそばからいなくなる。

 その間、僕は彼女のセーターを撫でながら待つ。

 ひと月経つと彼女は戻ってくる。

 おそらくたぶん、彼女は鶴女房ならぬ羊彼女なんだろう。

 僕と会えないひと月の間に毛刈りをして、その毛でセーターを編んでいるのだ。

 もちろん、僕がそう考えてることを彼女に言う気はない。鶴女房は鶴であると夫に知られてしまったとたん、彼のもとを去ってしまったのだから。

 僕は彼女が人間でも羊でもどちらでもかまわないし。

 でも一つだけ心配事がある。

 そろそろ結婚を考えてるんだけど、羊にも戸籍ってあるんだろうか?