ポイント

takato
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 他人の頭の上に不思議なものが見えるようになった。

 透ける青で「128P」などという字が浮かんで見えるのだ。

 浮かんでいる字のうち、数字の部分はひとによって異なるが、最後のPは変わらない。

 すべての人間の頭上に見えるわけじゃない。字が浮かんでいる奴と浮かんでない奴の割合は半々か、前者の方が少し多いくらい。

 自分の頭上にはない。とはいっても、自分の頭の上は鏡や写真を介してしか見られないので、そういう手段では見えないだけなのかもしれないが。

 

 俺は字が浮かんでる連中を、心の中で「字付き」と呼んでいる。

 最初に気付いたとき、驚きのあまり何も考えずに「頭の上になんか字が浮かんでるぞ。どうやってるんだそれ?」と字付きの相手に言ってしまった。

 職場の同僚だったのだが、なんだか奇妙な生き物でも見るような顔をされた。

 周囲に「コイツの頭上に字が見えるよな? 10293Pって!」と言っても、ひとりも自分にも見えるという奴はいなかった。

 字付きの人間にも、字付きじゃない人間にも、全員に「一度眼科へ行った方がいい」と言われた。

 

 俺には自分の目が悪くなったとも頭がおかしくなったとも思えなかったので、SNSで同じように字が見える人間を探した。

 ひとり見つけたが、それからすぐにアカウントが凍結されてしまったので、その唯一の仲間とたいした話はできなかった。

 俺と同じようにある日突然、数字とPの字の組み合わせが見られるようになったということだけだ。

 ちなみに凍結の理由は分からず、新しいアカウントも作れないままだ。

 別のSNSにアカウントを作るか、質問掲示板のようなところを利用するか考えているうちに、新しいものが見えはじめた。

 視界の右上の方に赤いエクスクラメーションマークが現れるようになったのだ。

 見え始めた当初は無視できたのだが、昨日からそれが点滅するようになり、気になってしかたない。

 そして今、あまりに気に障るのでそれが見えるあたりを虫に対してするように手で払ったら、ぽんっと音がして吹き出しのようなものが目の前に現れた。

「プレイヤー限定のポイント情報にアクセスできるようになったNPCの存在が複数確認されました。本日22時より緊急メンテナンスを行います。メンテナンス中はゲームをプレイすることができません」

 意味が分からない。

 分からないながらも時計を確認すると、時刻は午後9時59分、俺は――

 

  *

  

 結局、あの数字とPの組み合わせは、プレイヤーの保持しているポイント数だったのだ。

 この世界はオンラインゲームの中の世界で、字付きの奴はプレイヤー、字付きじゃない奴はNPC。

 つまり俺は、オンラインゲームの中のNPCだったというわけだ。

 緊急メンテナンス後の俺は新たな知識と権限を与えられ、問題行動を起こすプレイヤーに対処する仕事についている。

 報酬もいいし、やりがいもある。なぜかプレイヤーキャラクターにモテるようにもなった。

 それはいいのだが、毎日、会社員としての仕事もこなさなければいけないのが納得いかない。

 そっちの仕事はもうしなくていいんじゃないかと思うのだが、「自然な世界観が売りだから」そうもいかないそうだ。

 いや、宝くじが当たって働かなくていいニートにでも何でもしてくれよ。そういう奴がいても不自然じゃないだろ。

 おい、聞いてるか運営。