ある web 制作会社のふりかえり

takeshi81
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ITを駆使する猫エンジニア(ぱくたそ)

誰?

こんにちは。東京の片隅にひっそり生息している、アラフィフの web 制作者(ホームページ作成業者)です。1999 年に初めて web デザインのお仕事をいただき、2001 年に個人事業を開業、以来 17 年間フリーランスとして web を作り続け 5 年前に法人化、社員は私だけのまま現在 6 期目というところです。

今日、書きたいこと

来月から自分の会社は副業にして、とある会社に就職することになったので、振り返りを書き残しておこう、というのが、今回の内容になります。

私も健康などいくつかの制約があり、仕事に全振りできない状況で、5 年ちょっと会社経営を模索した記録です。

会社にしてから

業歴が長いので、会社にしてから今までの話を書こうと思います。

2018 年秋に法人化してからも、フリーランス時代と同様、ご依頼のあったお客様、多くは中小企業の web サイトを作ったり、そういったサイトの運用保守をしていました。

営業もフリーランス時代と同じ感じで、既存の取引先や仕事仲間、コワーキングスペースでのつながりなど、ご紹介をメインに、エージェント(仲介業者)経由の仕事も入れる感じでやっていました。

設立当初の狙いとしては、縁のある仕事仲間と協力しながら仕事をしつづけるための「便利な器」としての法人にしたかったのです。Web 制作という仕事は対ビジネス(BtoB)になるので、法人成りすることでデザイン料に対する源泉徴収が発生しないこと、昨秋導入されたインボイス制度で適格事業者になること、零細とはいえ法人という信用などが取引上メリットになると考えたのです。

とはいえ、私も法人経営は初心者であり、もう少し会社の運営に慣れてから、少しずつ規模を拡大するつもりでいました。

2 期目、そして新型コロナ

2019 年秋に初めての決算を迎え、2 期目に入りましたが、年がかわってすぐに新型コロナの感染が広がり始めました。先行きが見通せない状況でしたが、低廉に抑えていた役員報酬と助成金のおかげで、結果として法人はわずかながら黒字を計上することができました。

この頃、事務所兼用にしていた自宅が定期借家で契約期限が近づいていたため、23 区から郊外へ引っ越しました。

取引先もリモートワークの導入が急速に進んだ結果、打ち合わせも web 会議に置き換わっていて、必ずしも自分が都心から近い場所にいなくてもよいと(当時は)思ったのです。自宅に十分な執務スペースを確保したかった私は、古い団地の、最低限のリノベーションがされた部屋に入居しました。日当たり良好で部屋も広く、住み心地には満足しています。

拠点を移して心機一転、3 期目は低く抑えていた自分の報酬も上げて、営業をしっかりして仕事のボリュームを増やそうとしました。しかし、決算の時点で満足出来るレベルには届かず、赤字決算となりました。特別な費用がかかったわけではなく、単純に売上不足でした。

迷走

3 期目当初の決意とは裏腹に、営業はうまくいっていませんでした。

この時点で既に web 制作を請け負うというビジネスは飽和している、という認識はありました。

私自身、実際会社にしてからは、得意にしている CMS(コンテンツ管理システム)の保守・運用や、ノーコード・ローコードツールなどを使った業務の自動化・効率化の相談に乗っていることが多かったです。

振り返れば、そういったことを前面に出したらよかったかもしれません。しかしそういった情報発信をすることはなく、諸々の営業不足の結果、新規顧客が増えず、当然に売上が頭打ちになりました。

地元の個人事業者、中小企業との接点を模索したりもしたのですが、求められているスキルと、提供したいサービスがマッチしませんでした。地元のご縁は個人的に生かせたので無駄ではなかったのですが、ビジネスとしては web らしく、地域を意識せず広く営業活動するべきだったと思います。

続く 4 期、5 期も売上は低迷しました。この時期は私の健康上の問題から、改善策を練る余裕もなく、営業どころか既存顧客の作業にも支障が出かねない状況に追い込まれました。メンタルはどん底の状態でしたので、正直あまり記憶もないのです(私はメンタルが落ちると、頭の回転が極端に遅くなるタイプです)。

走りながら、考える

個人事業であれ法人であれ、自営業者に立ち止まっている暇はありません。時間は無慈悲に過ぎてゆき、経費は流れ出して行きます。

第 5 期の決算、そして 6 期目に入ってしたことは、まず「止血」、支出の削減です。一人会社で支出は元々少ないのですが、税務報酬、社会保険料、各種税金 etc. と避けられない支出がある一方、他の固定的な費用を削減していきました。自らの身を切る一方、親類縁者や関係者には様々な形でご協力いただきました(申し訳ないです)。

それと並行して考えたのが、今後の身の振り方です。「頑張って売上を作る」という選択肢はもうありません。3 年も「頑張って」だめなら、それは他に原因があります。頑張る以外の方法、あるいは他の頑張り方を考えなければいけません。しかし、都合よくこのタイミングでよいアイディアが浮かぶはずもなく、会社経営にこだわらず、広く選択肢を検討する必要がありました。

ある日、私は何気なしに転職者向け求人サイトを眺めていました。この時点で就職する気はあまりなかったのですが、思いの外自分のような経歴、スキルでも希望に合った求人がいくらかは存在することがわかりました。

いくつかの転職エージェントに登録もしてみました。求人票にはあらわれない、実際の転職事情を知りたかったのです。アラフィフで長らく自営業だったと伝えて返ってくる答えは、エージェントにより前向きであったり、消極的だったりしたのですが、粘ればどこかで内定はもらえる、全く望みなしではない、という点では一致していました。

試しにいくつか書類を送ったり、ご興味を持っていただいた会社と直接お話しさせていただいた結果、私の転職活動は正味 2 ヶ月で 2 社の内定を得て、うち 1 社に受諾のお返事をしました。

最後に

入社先が兼業可能であることと、既存のお取引先のこともあり、会社は縮小しながら継続する予定です。引き続き web に関するご相談は承りますので、お気軽にお声がけください。

Web を作ること自体は好きなので今後も続けると思いますが、会社の事業として受託 web 制作をメインに据えることはおそらく、もうないと思います。キャリアだけは長いので、知見ではまだ他に負けないと思いたいですが、それと経営はまた別の話です。経営というのは奥深く、私はまだまだ学びが足りないと感じています。

もし会社を再起動することがあれば、その時はピボットというか、もう少し切り口を変えた事業をしたいと思います。あるいは会社(営利法人)ではなく、別の形を選ぶかもしれません。

もしその時がきたら、改めてお知らせできればと思います。

@takeshi81
A wanderer or web designer. link.idw.jp