『記録をひらく 記憶をつむぐ』感想

Talia
·
公開:2025/10/14

 Blueskyの反応を見て気になりつつも、東京だしな…と思ってた所に東京を訪れる予定ができたのでこれはぜひにと見にいきました。見れてよかったです。

 ボリューミーでしたが非常に見応えがあり、飽きることもダレることもない展示でした(途中ちょっと疲れたけど)。個人的に気に入ったのは『満州へ!』のポスターを皮肉ったと書かれていた『牛』🐄

 写真は撮りませんでしたが藤田嗣治の絵がとても印象的でした。どう見ても暗く、戦争の残酷さを描いているとわかる作品なのに“プロパガンダ”に利用されてしまった壁一面に飾られた大きな絵。藤田嗣治は西洋画家で、当時西洋絵画は“外国の芸術”として日本で陽の目を見ることがほとんどなかったそう。そんな西洋画家たちが国から戦争記録画を描くように依頼され、ようやく自分の力を発揮できると意気込んで描く人が少なく無かったと一緒に展示を見た友人から説明を受け、朝ドラ『エール』の古山裕一(モデル:古関裕而)や『風立ちぬ』の物語を思い出しました。

 ほとんどの写真は撮影可能でしたが、一部作品は撮影が禁止となっていました。その中にはアンクル・サムのような露骨なポスターもあり、「悪用や切り取りを避けたのだろうか」と友人たちと話したりもしました。その友人が写真の展示を見ていた時に、左上の「倒すぞ米英を」の展示を見て「このイラストかわいい〜!」と写真を撮った人がいたということを言っており、複雑な心境になるなど。

 『牛』の次に印象的だったのは、撮影禁止だった小川原脩のインタビュー映像でした。「全然に行って戦争期録画を描くことに罪悪感は無かったか」と問われ「当時の人々は目の前に出された物に取り組むことで精一杯だった。(罪悪感があったと)言うことはできるが、それは結局詭弁に過ぎない。私は自分と同じ境遇でそんなことを言える人を信用できない」と答えた彼は、しかし戦後はプロパガンダに加担したことで自責の念に駆られ芸術の世界から身を引いたと解説にありました。その誠実さを思う一方で、自分がいつ、どんな境遇でプロパガンダに絡め取られてしまうかわからないという恐怖と不安を胸に抱く。

 展示期間の終盤、三連休の初日に行ったコレクション展は思ったより空いていましたが、観覧者がいなくなることはありませんでした。幅広い年齢層の男女が、そして半数と言ってしまえそうな多くの観覧客が“日本人”ではないと推測できそうな外国人で、スマホを手に解説文を翻訳にかけて読む人もいました(アフガンストールを巻いた男性もいました)。

 この場にいるみんな一人ひとりの胸に「戦争は良くない、怖い」という気持ちがあるかもしれない、これだけの人数そう思っている人がいるかもしれないと思うと少しな連帯と、勇気と、希望を感じることができました。

@talia0v0
とりあえず気ままに。