10月に伊吹島・本島・高見島に行ってきた。瀬戸内国際芸術祭の秋会期……ということで行ってきたので一応そういうアートの話を主として書こうかと思ったが、わたしがこの芸術祭に行っている理由って、「海と島と船が好き」に尽きるな……ということが分かったので、旅行記的に海と島と船の話をする。


一泊二日で、伊吹島と本島と高見島を巡った。近くの粟島にも当初は行く予定ではあったが、船などの移動に思ったより時間がかかったため島めぐりとしては3か所である。
※旅行者向け情報としては、船のチケットはすべて現金で、島内でなにか買おうとする際も現金のみの場合が多い。あと島は電波が弱すぎるので電子決済どころではないときがたまにあるので注意。
さて、伊吹島である。伊吹島と聞くと周辺の人ならば「ああ、あのいりこが有名な島ね」となる。讃岐うどんに使われている出汁はだいたいいりこ出汁であり、いりこの一大産地伊吹島は実質本場である。上陸した瞬間からいりこのバイブスが感じられる。まず港で売ってるしね、いりこが。
いりこ記念碑もあります。


いりこだけでなく、たとえば歴史や言語に興味がある人だと、伊吹島に残る平安~鎌倉期の京ことばのアクセントには興味を惹かれるかも。

上陸してすぐ急な坂道を上り、途中の作品を横目で見て、作品展示があるという学校に向かう。学校ってやっぱ場所としていいよな……と思わせてくる展示。

建物や路地の雰囲気がよい。


そして出部屋である。伊吹産院ともいう。


出部屋は島の文化として出産後に女性たちだけが共同で生活した場所のことで、昭和45年まで使われていたらしい。公式には出産後の女性たちを休ませるため云々とかいう説明がある。そういう女性のための施設であり仕組みという面が完全に建前なわけではないが、始まりとしては背景に出産後の女の「穢れ」の話がある。
また、出部屋の中では家事も自分たちでやらないといけないので必ずしも休めるわけではない、けど家にいるよりは楽、という体験者の語りもある。背景として女性が働き手であるのみならず姑との関係性が伝統的に抑圧的という文化があり……実際に出部屋を経験した人のインタビューを見ると「楽しかった」という感想も見られるし、女性間のケアや同じ時期に出部屋にいた同期との長年の付き合いをポジティブに語る人も多そう。一言で語るものではないことだけがわかる。世代や個人間で体験の差もあるだろうし。

産院の跡地にはキラキラの作品があってキラキラだ! と思いました。


島内を歩いていると急に美味しそうな香りがしてきたので食事にする。天丼である! お、おいしすぎる。地エビのほか周辺で採れたイカなどの天ぷらが乗っている。いやこれほんとにおいしい。タレもたぶんいりこの出汁が入っているのでは? 甘めでおいしい。揚げたてを出してくれるし……。実は普段天丼をあまり好んで食べないのだが、これはかなりよかった。

あとはフィッシュバーガーもある。うまい。ポテトと一緒にいりこが揚げられている。ところでわたしは瀬戸内海はフィッシュ&チップスの聖地になるポテンシャルがあると思ってるんですけど……。


そしてこれは民俗資料館。常駐のスタッフも研究員もいないのに貴重な資料が無防備に置かれている……予算がない!! 有志の活動に支えられている分野すぎる。展示室の机にざっくり置かれている読み物系の資料も面白かったので、時間が許せば普通にちゃんともっと読みたかったのだが……オンラインで公開してないのかな〜。
というわけで、楽しくあちこち歩きまわったあとは昼過ぎに帰りの船に乗り込んで帰港。微妙な時間である。粟島に行けるほどの時間はないので、まだ時間的に間に合いそうな高見島に向かうことにする。

高見島へはポパイ2で向かう(船の名前)
高見島は伊吹島よりもだいぶ小さい感じ。人口も少ないのでは。と思ったら十数人くらいの人口らしい。かつては除虫菊の栽培が盛んで栄えた時期もあったようだが、いまはもうほぼ無くなっている。小さい島なので、どこに行っても坂道か細い階段を通ることになる。

どこに行っても静か。かなり立派な家も多いのだが、もう誰も住んでいないように見える。



それはそれとして石を重ねて作られた塀や階段がすごくよい。雰囲気が好きだ。わりと地元もこういう石の塀が多いのでつい気になって見てしまう。
さて、作品の話である。これはロマンチックな雰囲気の作品で砂糖菓子のバラ。(「~ melting dream ~/高見島パフェ 名もなき女性(ひと)達にささぐ...」西山美なコ)

こっちはすごくきれいだった。(「まなうらの景色2022」村田のぞみ)

ひと通り島内の作品も見終わったのでのんびり浜辺に向かう。よく見るとところどころに作品と思しきものがあるな。



海! すぐそばにお墓が見える。砂に少し埋もれている感じ。ここは両墓制らしくて珍しいかもしれない。
海も見たし帰るか、と思って港に向かうが突然乗ろうと思っていた時間の便がもう満員だから次の便になる旨の放送が聞こえてくる。出航まで30分以上余裕があるのに?! 日本語の放送だけなので海外から来てる人はさらに大変だろうなと思う。
港に着くとすでに次の次の便を待つ人が溢れていた。離島は交通のキャパシティがな〜〜〜!!! 次の次の便まであと一時間半くらいあるが、「列に並ぶ」以外の選択肢がないぜ。が、芸術祭に来るような人間はカルチャー系の人間ばかりなので(悪口か?)、わりと多くの人がその場で本を取り出して読んで時間をつぶしていた。芸術祭、本を持ってきた方がいいっぽいです。

いろいろあったが無事本土(離島に対して四国のことだがこれも「本土」って言うのか?)に帰ったが、この時点でお腹が空きすぎている。周辺の飲食店を調べたが三店舗目でようやく食事にありつけた。予約とかしてないのがダメ。

バリ料理です。バリ料理?! インドカレーもあるよ! そして何を頼もうが絶対にナン食べ放題が付いてくるので、米とナンを食べた。米とナンを……?? だがうまい。
さて、二日目よ!
朝食のうどん。

そして本島に向かう。この日は天気が良くてほんとうに海がきれい。
とりあえずめちゃくちゃまばゆい海を見てください。浜辺に降り立った人が「ほんとうにきょうは海がきらきらしているねえ!」とうっとり息を吐くくらい輝いている海なので……。



夕暮れの海も。凪すぎる。


遠くに小島を浮かべてとびきりきらきらと光る凪いだ秋の海、そこで拾う貝殻。船のまっさらな白い手すりが潮風で湿って、静かに平らな海をかき分けて進む様子。坂道と石段と緑に覆われた島の風景、かつては産業があり豊かに栄えた家々に残る縁起の良い龍や鶴の装飾。まだ夏の野菜が実っている小さな畑、漁船や魚網。どこもかしこも美しい気配がある。
ば、場所がいい~~~~。この歴史やきらめきの上に乗せてもらっているだろ芸術祭の作品側が。瀬戸芸に来るたびに出る感想すぎる。

船の作品はどれもいい。船が好きなので……。

カニ。

でかい作品は最高。でかいだけでえらいからね。

布の作品もいい。テキスタイルのオタクだからね。

たこ焼きも最高。ソースはいつだって最高だからね。

貝殻も拾い放題。

ひまわりも咲き放題。(?)

お察しかもしれませんがこのとき気温が27度くらいある。ちょっとだけ過ごしやすい真夏? 秋会期のはずなのだが……。
というわけでショートトリップ島巡りでした。
以上