ヘリタンス・カンダラマには二泊して、三日目のチェックアウトの朝である。ホテルがあまりに辺鄙な場所にあるので、朝食と夕食をすべてつけているのだが、わりとメニューも変わるので飽きることはなかったと思う。パッションフルーツやパイナップル、パパイヤなどのフルーツ類も多くてうれしい。パッションフルーツはこの日の朝がもっとも「当たり」でおいしかった。
べつにいいんですけど、朝食の際に近くの席に座っていたおそらく英国からの旅行客の女性が、持参マーマイトをテーブルの上に堂々と置いて食べていたので面白くなってしまった。UKからスリランカにマーマイトを持参……?
ヘリタンス・カンダラマのよさは一泊ではわからないというレビューを信じて二泊したけど、わたしは一泊でよかったなと思った。規模が大きすぎるし辺鄙すぎる。

さて、ガイドとの旅も五日目となったが、ついにこの日はガイドがいなくなる日である! やった~~~~!!!! 自由だ~~~~~!!!! ガイドを頼んでおいて最悪の言い草だが、わたしってほんとうに他人がいてほしくないことがわかった! この日はキャンディに向かって、そこでガイド兼ドライバーとはお別れである。
昨日、帰り道にガイドから「キャンディに行く途中で『宝石博物館』とスパイスガーデンに案内してあげる」と言われていた。スパイスガーデンはわかる。すべての観光客がドライバーに連れていかれる場所だって事前に旅行動画で見たから。様々なスパイスに使われる植物があって、その場で体験したり購入ができる場所で、ショップの価格が通常の3割増しのところでしょ!? べつにまったく行きたくないが……そんなことより早く自由になりたい。
そして宝石博物館はいわゆるミュージアムではなく宝石ショップのことっぽい。スリランカは宝石も有名で、目利きが見れば良い品が安く買える場合もある……が、観光客向けのぼったくり店も多いことはリサーチ済みだし宝石には興味がまったくないのでぜんぜん行きたくない。そんなことより早く自由になりたい。
ガイドと合流した瞬間に「今日はまっすぐキャンディに向かってほしい。どこにも寄り道しなくていい」と伝える。これで安心……と思ったら、ある程度走ったところで急にギュンと車が右折してスパイスガーデンに入場した。おい!!!!!!!!!!!
仕方がないので話だけ聞くことになる。スパイスガーデンには日本語が非常に達者なスタッフがいて、ガーデン内を案内してくれる。
実際に木に実っているスパイスを見るのは楽しいし、シナモンの木やコショウの木、カルダモンの花とか興味深い。ほかにも何組か観光客がいて、それぞれの言語(英語やドイツ語や日本語)で案内されているようだった。あとは、近くのアーユルヴェーダ学校の生徒がいて無料で施術をしてくれる(気に入ったらチップを払ってねと言われる)がどうか? という案内とか、割高ショップに誘導されたりとかがある。まあ、興味深くないわけではない。が、何が気に食わないかと言ってこちらの要望を無視されていることである。早く自由になりたいだけなのに。
案内が終わった瞬間にショップを飛び出てドライバーに駆け寄ったわたしの顔が怖すぎたのか、無言でドライバーが車を出してくれて途中の屋台でジャックフルーツを買ってくれる。絶対これ、詫びジャックフルーツだ……。

いろいろあったがキャンディに到着。
キャンディは湖畔の街で、人口も多く栄えている雰囲気。車通りも多いし、店も多い。また、仏歯寺があってお参りに訪れる人も多い。
泊まったのは仏歯寺のすぐ目の前にあるクイーンズホテル。19世紀のコロニアル建築のホテルで、比較的料金も安いのだが、場所も便利で古い様式のホテル建築が好きなので選んだ。手動エレベーターもある! 呼んでも全然来ないけど!

ホテルチェックイン後即円満にガイドと別れて、ようやく自由な旅のスタートである。これまでなんだったの? テンションが急激に上がってくる。

さっそくすぐそばのベジタリアンレストランに入る。ドーサ! あまり日本で食べられないし、本格的な感じでおいしそうだったから! 激安である。しかもおいしい。最初オーダーが通ってなくてちょっと待ったけど、まあもうそれはいい。自分で選んだ店で自分が選んだ自由の味である。ほんとうに、他人に耐えられない性格の人間がつきっきりのガイドなど頼むものではないことが分かりますね。

国立博物館もある。なんか……他に誰も客がいなかったけど……。エアコンもないしスタッフはスマホで動画を見ているし案内もないが、まあそれはいいよ! 政府に金がないってこういうこと? 展示は面白いのですが……。

ある程度規模の大きな町なので当然オシャレカフェもある。紅茶がおいしい。ムレスナティーのカフェなのだが、空いているし静かだしお茶はおいしいしケーキも美味しい。お茶はかなりおいしいと言っていい。キャンディといえばもう紅茶の産地である。ここは一階がショップで二階がカフェになっている。
あとは地元の書店をひやかすことにする。5階くらいある細長いビルの書店に入る。ほとんどがシンハラ語かタミル語の書籍だが、上階には英語の書籍もあってわりと興味深かった。日本人作家の英語版書籍もあるし、米国のベストセラービジネス書とかもある。スリランカの自然や文化に関する本と料理本は気になったけど、大きめのハードカバーがメインだったのであきらめる。

ほかにも、キャンディにはショッピングモールもあって、屋上にはなんとビアードパパの店舗もある。さすが都会にはなんでもあるなあ。

夕食は目をつけていたローカル食堂が早めに閉まるのを知らなくてしばらく街をさまよったが、路地裏のまあまあ怪しい立地にある店に滑り込んだ。コットゥも食べてみたいと思っていたんですよね。そばめしのバイブスがある料理だ……。馴染む味をしている。
この日はほんとうに「自由だ!!!!!!!!」しか感想がない。自分の思うとおりに自由に行動できるって、最高! この性格の人間、絶対ガイドを頼むべきではない。
キャンディに到着したのが13時前だったし、ゆっくり街歩きをして疲れたので仏歯寺は明日に回すことにする。さて、ホテルは古いけど清潔だし不満がないなあと思って21時にはベッドに入った……のだが、夜中2時ごろに隣室から何かの物音がして目が覚めた。
あのさ~~~~~~19世紀のホテルでセックスをするな~~~~~~~~! めちゃくちゃおもしろい。壁が薄いのよ壁が!!!!!
この時間にフロントに電話するかと言われるとちょっとためらわれるなあ……と思って耐えてたけどもう面白くなっちゃってYouTubeの動画をでかめの音で再生して隣室の雰囲気を壊すことに腐心したりして結局ぜんぜん寝られなくてウケました。ホテル自体はぜんぜん問題ないんですけど、壁が薄いとこういうことが……あるぜ!!!