フィンランド旅行では、アアルト建築を旅の目的の一つとしていたが、そのほかにも「本好き・建築好きとしては図書館も見たいよね」ということで各地で図書館に入り浸っていた。蔵書や設備自体もおもしろい点があったが、建築的にも見どころが多く、また公共施設の在り方について考えさせられてしまう。自分の街にぜひとも欲しい図書館がありすぎる……。わたしも図書館で気軽に3Dプリンターを使いたいし、楽器も使いたいし、美しい光が差し込む窓辺のいい感じの椅子で一日やすらかに本読んで過ごしたい!!! ゲーム(各種ハードに対応したソフトのほか、もちろんアナログゲームもある)とか、豊富なCD・DVDとか、楽譜とかを図書館で借りられるの、うらやましすぎる!
また、ヘルシンキで書店にも立ち寄ったが、VATもあって本の価格が比較的高いので(なんとなく興味を引かれて手に取った本がおおむね30〜45ユーロくらいの感覚だった)、図書館が充実していると読書好きとしてはうれしい。ちなみにフィンランドでは図書館で本が借りられると、本の作者に対して一冊あたりいくらかが支払われるようだ。おもしろい仕組みだと思う。同じく図書館で借りることができるゲームやCDも同様(作者や制作会社にお金が入る?)なのかなー。
ヘルシンキ
ヘルシンキには38の図書館と2つの移動図書館がある。そのうちの5つに立ち寄ったが、どこも雰囲気が違うものの、平日の昼間でも利用者が多いのが印象に残った。
また、3Dプリンターやミシンなどの設備も充実しているので、なにか物を作っている人も多かった。ちょうどOodiに行ったタイミングでミシンを使っている人がいたが、正直かなりうらやましい。いいミシン、使いたいですよね……もちろんミシンの横にはアイロンなどもあるし、ぜんぶここで完結してしまう……。
Helsingin keskustakirjasto Oodi

ヘルシンキに2018年にオープンした新しい図書館、Oodi。ALA Architectsによる建物は、外観も特徴的で、大きく波打つような外壁が面白い。フィンランド独立百周年を記念して建てられた。2019年8月には、国際図書館連盟(IFLA)からPublic Library of the Yearを受賞している。

(↑建築的にはこういうところの処理を見てしまうぜの図。)
ここでは、本を読む・借りるだけではなく、イベントスペースや会議室、スタジオなどのスペースを備えるほか、3Dプリンターやミシン、大型レーザープリンター、レーザーカッター、楽器、ゲームなどの利用もできる。単に図書館というより複合施設と言ってもいいかも。Oodiとは「賛歌」のこと。「フィンランド文化」「読書」「言論・表現の自由」「平等」「民主主義」への賛歌をあらわす。詳しく知りたい人向けにはガイドツアーもあるようだった。
「手を動かして何かを作るのが好き」タイプとしましては、2階のワークスペースを見た瞬間に興奮して、「3Dプリンター! ミシン! なんかでっかいプリンター! あと映像編集ができたりするいい感じの機材を備えたいい感じの部屋! 近所の図書館にもほしすぎる!!!」しか言うことがない。ほしい……今年の誕生日になにか望みが一つかなうなら、これを我が家の近所に作ってほしい……。
設備の予約はインターネットからできるようで、該当ページを見ると夢のような3Dプリンター×複数! とかが出てきて、胸がいっぱいに……どうにかして家の近所にこれだけの設備を備えた公共施設ができませんか???


それはともかく3階の読書フロアもよかった。窓が大きくかつ全体的に書架の高さが抑えられているため、フロア全体を見通せて落ち着いた明るい印象を与えている。棚が低いので本を取り出しやすいし、通路も広いので使いやすいことでしょう。
Rikhardinkatu Library(Rikhardinkadun kirjasto)

1986年までヘルシンキの中心的な図書館だったところ。1881年に北欧最初の公共図書館として建てられた。そのため、Oodiなどと比べると建築様式は古典的。けど、それが落ち着いた雰囲気を醸し出していてよい。訪れたタイミングでは窓辺の椅子はほぼ埋まっているくらい利用者がいた。
また、ハーネスを装着させていれば犬を連れて入ることも可能なので、読書をしている人の足元におとなしく寝そべっている犬というのが結構いて大変よかった。かわいいね。小説くらいは読めそうな顔つきをした犬たち……。

アート本の収蔵が結構あるようで、行ったときも装丁が凝った本の展示があった。日本の写真集もあり、なぜか隣に帯締め(?)が並べて置かれていた。これはもともと装丁として帯締めで本が巻いてあったりするのかな……。

この吹き抜けの雰囲気が良い。階段下のホールでは子供向けのイベント(講演会? 授業?)をやっていた。

日本の漫画も結構ある。
National Library of Finland(Kansalliskirjasto)
フィンランドの国立図書館で、以前はヘルシンキ大学の図書館のひとつだったらしい。1844年にCarl Ludvig Engelによって設計された。歴史的にはいろいろあるっぽいのだが、ややこしいのでここでは省略する。建物については、オンラインツアー(バーチャルツアー)もあるので、興味がある方のためにリンクを貼っておきます。
ここは大きな荷物などは持って入れないので、入口右手の無料ロッカーに荷物を預けて入る仕組み。ヘルシンキ大聖堂のすぐ近くなので、観光客も寄りやすいと思う。ただ、Rikhardinkatu図書館もそうなのだが、古めの図書館って入り口がちょっと分かりづらい。

内部は壮麗と言っていい雰囲気で、建物の写真を撮りに来ている人も多くいた。

なぜかガラスケースに展示されている『ゼロから話せるフィンランド語』!
Helsinki University Main Library - Kaisa House(Kaisa-talo)

ヘルシンキ大学の図書館で、Anttinen Oiva arkkitehditによる設計。アカデミックな図書館としてはフィンランド国内で最大らしい。地下鉄の駅からも直結で便利な場所である。行ったときは雨の日だったせいか、すべての階でほぼ椅子が埋まるくらい学生と思しき人がいた。ちょっと工事中だったので外観の写真があんまりかっこよくないけど。


大きな曲線を描く窓がいい。階段も吹き抜けで、どこか明るい雰囲気がある。
Munkkiniemi Library (Munkkiniemen kirjasto)
アアルト自邸のツアーに行ったのだが、そのすぐ隣にある小さな図書館である。地域にある身近な図書館という雰囲気で、見た目にはちょっと大きめの公民館くらいのイメージかも。
地域の小さな図書館っていいもんですね。アアルト関係の本も何冊か目立つところに並べてあり、なかには日本語で書かれた本もあった。アアルト自邸のツアーに行く人で、早めに着いちゃった! という人はせっかくなので入ってみては。
写真を撮った気がしていたが撮ってなかったようだな……?
ユヴァスキュラ
ユヴァスキュラといえばアルヴァ・アアルトゆかりの街。ここでは図書館に限って言及するが、アアルト建築で有名なユヴァスキュラ大学があり、大学なので当然ユヴァスキュラ大学図書館もある。また、セイナッツァロの町役場もアアルトの有名な建築の一つだが、ここは複合的な施設なので図書館も併設されている。
Jyväskylä University Library(Jyväskylän yliopiston kirjasto Lähde)
ユヴァスキュラ大学図書館。Arto Sipinenによる設計で、1974年に完成した。2021年に改修されたらしい。ほかにもアアルトの手による図書館もある。正直「全く関係ない大学の図書館をうろつく旅行者ってちょっと不審では?!」という自意識が邪魔してそんなにゆっくり見れてないのですが、白や黄色の内装で明るい雰囲気でよかった……と思う。見学OKみたいだけど……。
そして写真を撮った気がしていたが撮ってなかったようだな……?(2回目)
セイナッツァロの町役場(の図書館)

こじんまりした図書館で落ち着く。やっぱ普段田舎に住んでるからでしょうか……地域の小さな図書館みたいなのって、結構よくて……。ここはアアルト建築っぽいディテールも豊富なのでファンにもうれしいと思う。
セイナヨキ
セイナヨキもアアルト建築が有名な街の一つ。ここの図書館はアルヴァ・アアルトの手による旧館と、JKMM Architectsによる2012年に建てられた新館がある。この二つは隣接しており、繋がってもいるので、どちらも行ってみるとよい。なお、新館はApilaと呼ばれていてこれはクローバーのこと。上から見たらクローバーの形をしてるらしいけどほんとかしら。
Seinäjoki Main Library(Seinäjoen pääkirjasto Apila)


JKMM Architectsによる建築で、2012年に建てられた新しい図書館。今はこちらがメインの図書館になっている。建物がかっこいい~~~大きな窓がある建物が好きなので……。思わず窓辺の椅子でしばらく本を読んだ。近くの棚にあったAli Smithの『There but for』。


ご自由に過ごせる謎の穴もめちゃくちゃいい。気付いたら1時間経ってしまうタイプの穴だ。
Library designed by Alvar Aalto Aallon kirjasto

落ち着いた雰囲気でいい。入口付近にはアアルトベースなどのガラス製品の展示があって、それも好きな人にはうれしいのでは。

あと、カウンターにご自由に毛糸をお取りくださいコーナーがあっておもしろい。要らない毛糸のシェアコーナー、うちの近所の図書館とかにもあってほしい。フフ、「近所にほしい」を言いすぎ。

Apilaからは地下を通って来れるようになっているのだが、ちょうど地下からこちらの旧館に入ったところのスペースが建築本コーナーで、各種アアルト本とかが豊富に手に取れるようになっている。全体的に、置いてある本もよさそう。
ちょうどアート系の本コーナーで表紙を向けて置かれていた、ピックアップ選書コーナーみたいなところにあった、『The Art Of Drag』という派手派手ピンクのドラァグのイラスト本が気になって読んだけど、これ面白い本ですね……有名なドラァグクイーンの紹介とかもあるけど、日本のV系文化にも言及があったり、幅広い国や地域の伝統的なドラァグ的芸能(日本なら歌舞伎の女形とか)の紹介もある。帰って紀伊国屋書店で買った。フィンランド図書館による謎の販促効果……。
タンペレ
タンペレは比較的大きな都市(三番目くらい)で、街の雰囲気がよかった。工業都市の歴史があり、赤煉瓦の建物が並ぶ地域がある。滞在時間が短かったので、あまりあちこち行けてはないのだが……。そんな中で、City Libraryは9時からオープンしていて行きやすいという理由で行った。一般的な商店が開くのが10時~11時以降だったからね……。でも、ここは結構よかったな。ちなみにタンペレにも14の図書館と2つの移動図書館があるらしい。
Tampere City Library(Pääkirjasto Metso)

1986年にReima Pietilaの設計で建てられた。特徴的な形をしており、建築家がアイスランドで見た鳥の求愛にインスパイアされたものらしい。Google mapsのレビューを見ると、建物の輪郭が鳥の形をしているというコメントが多く見られる。あと、内部がアンモナイトみたい、と言われているのも分かる造形。


この吹き抜けの特徴的な青い天井もいいし、個人的には音楽コーナーで一部屋まるまる使われてたのもよかった。

K-POPとかのCDも豊富、楽器を弾ける防音室も複数あり、ピアノなどの楽器も借りられるし、楽譜もいっぱいあるし、いかにも音楽好きそうな感じの雰囲気の人が司書カウンターに座ってて……いかにもめちゃくちゃ音楽好きそうな人が職員にいるの、頼れそうな気がするし……。

あと初音ミクさんもいますね。グローバルコンテンツだ。
あまり図書館目的の旅行ではなかったが、初日に行ったOodiがよすぎて結果的に他の図書館も見てみたくなりあちこち行っちゃったな。
全体的にどこも施設として質が高いので、公共施設というものの意義、図書館というものの在り方について考えてしまう。近所にこういう施設がほしい。
以上