消極的なショートケーキを作った

tamsae
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コーヒーに生クリームを乗せて飲むことが好きだ。喫茶店ではウインナーコーヒーを頼んだり、わざわざ頼まなくてもクリームがついてくる店のことを手放しでありがたがっており、家でも飲めたらいいなと、割と常々思っている。

もう何ヶ月も前、セリアで「ふりふりクリームメーカー」という、生クリームを容器に入れて3〜5分振るだけでホイップがつくれるよ、という商品を見つけて買っていた。時間に余裕が出てきたので、ためしに生クリームを買ってきて、朝コーヒーを淹れながら、振ってみた。

10分やってもできなかった。たしかにとろりとはしているけど、ホイップできるような代物ではない。目覚めた直後のろくに動かない筋肉で行為に及んだ自分の非力さが悪い可能性もあるが、ぜひふりふりに成功した実例ではどれくらいの激しさで振るべきかを教えて欲しいと思う。

結局これは泡立てるしかないと感じ、「ふりふりクリームメーカー」の中身をボウルに出して泡立て器で混ぜ始める。少し混ぜたところで、残りの生クリームをどうするのか?という現実に気がつき、結局全ての生クリームを朝から混ぜることになる。朝から何をやってるの?

持ち前の非力さで途中まで絶望しながら混ぜていたのだが、両手で泡立て器を挟み火を起こすように回転させることで、電動ホイップ器のぐるぐるを再現したところ、圧倒的にスピードアップした。これはいい。圧倒的成長。絶望した10分後にはすぐに8-9分立てのボウルいっぱいのホイップクリームが誕生し、ピンチはチャンス!大暴落からの急騰を見た。

さてこれから、すべてのクリームをどうしようか。もちろんこれはコーヒーのために作った。小分けに絞って冷凍するやり方は頭にあったのだが、この量を冷凍するには、冷凍庫の広さがなさすぎるし、きっと冷凍であれ使い切る前に悪くなるだろう。うー

とりあえず淹れていたコーヒー(なんと豆はグランドキャニオンで買ったレアリティの高い豆だ!こいつは二度と飲めねえぜ!)にできたてのクリームを乗せて飲む。おいしい。目的を完遂してしまった。目的のための対価が大きすぎる。どうしよう。仕方がないのでとりあえず冷凍しはじめる。わざわざ絞ったりなんかしてやるものかと、ボウルからスプーンで掬い、ラップを敷いたバットに並べて冷凍庫へ入れた。帰ったらジップロックにでも保存したらええやろう。しばらくはコーヒー生活が充実するだろう未来、うれしい。しかしボウルには半分以上のクリームが残存。どうするんやろ。このときすでにケーキの選択肢が浮かんでいたが、わくわくというよりは、だめにしてしまうのではないかという不安のほうがまさる。

家に帰り着いたのは21時ごろで、それなりに疲れており、できることは限られていた。車で送ってもらえたので途中スーパーに寄ってもらい、いちごをひとパックと、シーズンでもないスポンジ(15cm)を探し出して購入。合わせて800円程。

こんなに消極的な理由でケーキを作ることもないだろう。冷蔵庫にネギ余ってるから使い切っちゃおう〜といったものとは訳が違う。でも冷蔵庫に生クリーム残ってるからという理由でショートケーキを作り出す人間がこの世には存在するんだな……

と思いながら、スポンジにクリームを塗り、いちごを切って乗せてショートケーキを作った。もちろんきれいじゃないが、できた。ホイップクリームをちょうど使い切れたよろこびと、スポンジは市販とはいえ自分でケーキをつくったことが小学生以来なかったため、塗って並べただけでも眼前にホールのショートケーキが立ち上がっただけで何かすごいことをした気がした。

義務的な気持ちでいたものが、だんだんうれしくなってきて、ハッピーバースデーを歌う。だれか、おめでとう!

おいしかったです。