今日は日帰り長野。
私が取り組んでいる実践研究のテーマ「食を切り口にした地域ブランディング」に関するミーティングなどをこなし、充実した一日を過ごしたのだった。ただ一つの厄介ごとを除けば。
私がマネージャーをしている飲食店で、アルバイトを一人クビにしたのだ。理由は「重大なハウスルール違反」。被害届を出そうと思えば出せないこともないが、彼にも未来があるので「損害賠償の権利は放棄するから今辞めてください」というかたちで丸く収めた。
小さな心の緩みからどんどんと行動がエスカレートし、最終的にはこんな大事になってしまう。以前にも悪事が発覚したことがあったようだが、その時は厳重注意で済ませたらしい。しかし肝心なのはその後の対処だよ。人を雇って預かる限りは、彼らを犯罪者にしてはいけないんだ。自分の下に就いた人間は全員幸せにするのが管理監督者の責務なんだよ。
店長はバイト上がりの20代半ばの男の子。学生バイトを使うことが一番難しい年頃だ。私もその年代の頃には散々苦労した。店長も彼の問題行動見つけるたびに注意していたが、問題児の行動が改まることはなかった。そこは上席がサポートしつつ店長の育成も行っていかねばならないのに、歴代の担当者でそんなことをする人は誰もいなかった。そして貧乏くじを引く羽目になったのは、他ならぬ私だった。
この仕事を続ける中でこんなことには慣れている。というか、こんなことばかりだよ。人を斬れば返り血を浴び、自分の存在が穢れていく。人が嫌がることを肩代わりし続けていると敬して遠ざけられ、そのうちヤツらの罪悪感が閾値を超えると、彼らの弱い心を守るために私は被差別階級に立場を固定されるのだ。義務教育を私も受けているので、歴史の必然としてそうなることくらいはわかる。
でも仕方ないのだ。綺麗事ばかり並べて自分の手を一切汚さないヤツらのことを、私は最も軽蔑して生きてきたのだから。
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“ ハチのムサシは死んだのさ、夢を見ながら死んだのさ。遠い昔の恋の夢、ひとりぼっちで死んだのさ。”
『ハチのムサシは死んだのさ』平田隆夫とセルスターズ