ダチョウが!!!!!!ダチョウが走ってきます!!!!!!!!!!
と言って駅のホームで私を庇ってくれた人がいた。その人は電車のことをダチョウの列だと思っているみたいだった。確かに、ダチョウは足が速いから、間違えることもあるかもなぁ。その人の時間がゆっくりだったら、ダチョウ以上の速さは全部ものすごい速さに見えて違いなどわからないかもしれないし。その人は、ピンクのカーディガンに黒いロングスカートを着ていた。それでは……と言って、恥じらいながら去っていった。とてもゆっくりとした足取りで、なんとなくその人のことが好きだなぁと思った。
その後電車に乗りながらぼんやりピンクのカーディガンの人のことを考えていたのだけれど、あの人はどうして駅のホームに来たのだろう。電車に乗るのだろうか?もしかしてあの人は、ダチョウの背に乗って移動しているのだろうか?そうだったらなんて嬉しいことだろう。他のものはどう見えているんだろう。その人が見る世界をもっと知りたいと思った。また会えたら、友達になりませんかと声をかけてみたい。
私は目を瞑って、この電車はなんの生き物だろうと考えてみることにした。冬だから生暖かくて、何かの体内だと思える。細長くて、心地よく揺れている。いつしか、大きな蛇の腹の中で眠っているような心地になった。私にとってこれは蛇だなぁ……ダチョウの方が可愛らしいかしら……。