ぼくだけのZOO/短歌30首連作

きりんモリモリ
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公開:2025/1/14

水槽のシロクマだった頃、ショートケーキは「かぞく」と教えられた

吃音の父を責める実だとしてもゆるしてねってエミューは走る

じいちゃんがネズミに足をかじられて半分生きていた夏だった

そろばんが得意な母の貧しさをみているぼくはペガサスを呼ぶ

ぬるい水から人間の味がしてみんなでお湯になりそこなった

春、蛇が泳ぐ季節に私(わたくし)はショートケーキを投げ捨て北へ

もし明日死ぬとしてこの冷蔵庫にはカステラがはっきりにあう

遠のくのはいつもきりん この地層をめくれば笛があったはずなの

ぼくは胸にふくよかな虎を湛え、溢さないようじっとしている

片足をなくしたけれど鷹である いつか私も盗賊になる

だれも目もくれない静寂の水辺を燃やすように立つフラミンゴ

いつのまに鯨が棲んでいたのだろう ぼくのいかりのふかさのなかに

1+1=ピスタチオ かなしい日、賢いイルカと出した数式

鹿は銀の風となってぼくを刺し、このゆううつをつれさっちゃった

生前葬 象が私を鼻で撫で、もう大丈夫もう大丈夫

ひたはしるうさぎの群れにつづきなさい そして流麗な詞になりなさい

「ねえオカピ、自分で靴を選んだの、はじめてなんだ」「ぴったり?」「ううん」

はじまりの鰐が教えてくれたこと、諦めを捨てようく噛むこと

クラゲは月になれてずるいと言えば「きみも月だといえば月だよ」

シリウスは犬の星なの またたきの八光年のために歌って

花があう犀は林檎を踏みしめて私は裸であるといった

バイソンのように背中に山をおき、きみの叫びにこたえたいのだ

ぼくの馬が足をくれたならぼくは遠くの人に水をあげよう

パフェになれないことさえもたずさえて桃源郷の先へいこうよ

いとおしいどうぶつたちを解き放ち見渡す限りぼくだけのZOO

@tantakadance
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