水槽のシロクマだった頃、ショートケーキは「かぞく」と教えられた
吃音の父を責める実だとしてもゆるしてねってエミューは走る
じいちゃんがネズミに足をかじられて半分生きていた夏だった
そろばんが得意な母の貧しさをみているぼくはペガサスを呼ぶ
ぬるい水から人間の味がしてみんなでお湯になりそこなった
春、蛇が泳ぐ季節に私(わたくし)はショートケーキを投げ捨て北へ
もし明日死ぬとしてこの冷蔵庫にはカステラがはっきりにあう
遠のくのはいつもきりん この地層をめくれば笛があったはずなの
ぼくは胸にふくよかな虎を湛え、溢さないようじっとしている
片足をなくしたけれど鷹である いつか私も盗賊になる
だれも目もくれない静寂の水辺を燃やすように立つフラミンゴ
いつのまに鯨が棲んでいたのだろう ぼくのいかりのふかさのなかに
1+1=ピスタチオ かなしい日、賢いイルカと出した数式
鹿は銀の風となってぼくを刺し、このゆううつをつれさっちゃった
生前葬 象が私を鼻で撫で、もう大丈夫もう大丈夫
ひたはしるうさぎの群れにつづきなさい そして流麗な詞になりなさい
「ねえオカピ、自分で靴を選んだの、はじめてなんだ」「ぴったり?」「ううん」
はじまりの鰐が教えてくれたこと、諦めを捨てようく噛むこと
クラゲは月になれてずるいと言えば「きみも月だといえば月だよ」
シリウスは犬の星なの またたきの八光年のために歌って
花があう犀は林檎を踏みしめて私は裸であるといった
バイソンのように背中に山をおき、きみの叫びにこたえたいのだ
ぼくの馬が足をくれたならぼくは遠くの人に水をあげよう
パフェになれないことさえもたずさえて桃源郷の先へいこうよ
いとおしいどうぶつたちを解き放ち見渡す限りぼくだけのZOO