「陽炎」とはよく言ったもので、ゆらゆらと揺れる景色はまるでアスファルトから立ち上る炎のように見える。
いつもなら鬱陶しい暑さも、さっきスーパーで買った「アレ」にはちょうど良いくらいだ。
少し立ち止まって手に持ったガラス瓶の口にピンク色の栓を押し込む。ぽん、と弾けるような音がして圧力が解放される。
真上から照りつける日射しと、靴底越しにでも感じる地面からの熱量に急き立てられるように、溢れてくるのも厭わずに瓶から透明な液体をあおる。
爽やかな甘さと、冷たさ、そして喉を通る炭酸の刺激がうだるような暑さを緩和してくれる。
半分ほど中身の減った瓶を揺らすとかちゃかちゃと中のビー玉が音を立てる。
満足げに笑いながら、眼鏡をかけた青年は画面越しに笑った。
「読んでたら、ラムネ、飲みたくなっただろ?」