美術館と蚤の市

たらこ
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先週、岡崎へ出掛けた。この日は夏日でとても暑かった!うっかりして家に日傘を忘れたので、陽射しを避けられない。バスを降りてから心なしか駆け足で美術館へ直行しようとしたら、平安神宮前の公園が人で賑わっていた。あれ?平日なのに?と覗いてみると、蚤の市が開催されていてビックリ。偶然の巡り合わせに興奮。絶対あとで寄ろうと心に決めて、美術館へ。

まず『金曜ロードショーとジブリ展』へ。妹が観たいと言ったのでチケットを取ったのだ。予約制なので、ゆったり観れるかと思いきや、それなりに混んでいた。まず第一の展示では、時系列で作品を紹介。それぞれの絵コンテと、その年に流行ったものなど世相と照らし合わせて鑑賞できる。絵コンテの書き込みを読んでいると、宮崎監督は「ちょっと」と書かず「一寸」と漢字で書くという、こだわりに気が付いた。監督のなかで「一寸」というのは、このぐらい!というのがしっかりとありそう。動作が大きすぎても小さすぎても駄目なんだろうな。私は米林監督のアリエッティとマーニーの絵コンテが気に入った。程よく細部まで描かれてるけど柔らかいゆとりも感じれる良い絵コンテな気がする。そのあとは写真OKの展示が続き、なかでもナウシカの腐海を再現した造形物群は見応えがあった。妹は、これが観たかったらしい。このスペースは暗闇でフラッシュは絶対禁止。会場は王蟲の眼や他の生き物たちの眼だけが光っていてかなり怖い。360度、驚くような再現度で慄く。しっかりとナウシカの世界なんだけど、ちょっとジブリから離れた悪夢のような禍々しさも感じて面白かった。

一旦、美術館を出てランチをして休憩。第一候補だったカフェはほぼ満席だったので、近代美術館のなかにあるカフェでパスタを食べた。今まで入ったことなかったけど、意外と美味しかった。

食べ終わったあとは妹と別れて、蚤の市へ。思った以上にたくさん出店してて、色々な雑貨をじっくり見ることができて楽しかった。他人から見たら古びたおもちゃだろうけど、魅力的な小さくてかわいいものを購入。大事にしたい。

美術館に戻ってKYOTOGRAPHIE2024の作品展のひとつである『潮田登久子 冷蔵庫+マイハズバンド/川内倫子 Cui Cui + as it is』を観る。まず潮田登久子さんの作品から。定点観測が好きなので、この冷蔵庫の作品も楽しみにしていた。定点観測は動画も写真も見ていて楽しい。一つ一つはありふれた日々の一場面なのに、同じ光景が並ぶだけで、なぜこんなにも多くの物語を語るようになるのだろう?私は、風のように通り過ぎていく生活を留めておこうと、ちょっとずつでもこうやって日記を書いてるけど、写真で撮る定点観測にも似たものを感じて好きなんだと思う。すごく良い作品が観れた。

次に川内倫子さんの展示。滋賀近代美術館の展覧会でも観れたCui Cuiシリーズをクローズアップして展示していた。今回も死と生が素晴らしい純度で表現されてて、その透明感と煌めきに眩暈がした。年老いた手の写真を見て祖母を思い出して胸がぎゅっとなった。ただ、as it isの川内さんのお子さんの映像作品を観ていると、私の両隣にいる人がそれぞれフフフあははと笑っていて、少し居心地が悪かった。多分、2人とも赤の他人同士だろうけど、反応するところが一緒だった。私は、笑い続ける2人に挟まれながら、最後まで静かに観ていた。

なぜ居心地が悪かったのだろう?と考えたのだけど、多分「赤ちゃん」または「小さな子供」に対して愛くるしさを感じる前に「この世に生まれた生命」に対する無垢な輝きに色んな意味で圧倒されてしまったからだと思う。微笑ましく鑑賞する余裕を持てなかった。死と生の循環を目の当たりにして、その作品にのまれてしまったのかもしれないなあ。