静かな夜のなか、電車の走る音が風にのって聴こえてくる。それは小さく聴こえるときもあるし、近くで走ってるように聴こえるときもある。全く気にならないときの方が多いけど、その音を聴くときの心の状態によって、とても寂しく哀しく感じることがある。
ときには汽笛も流れてくる。遠くから届くからなのか、なんだか儚い音色で。なぜか侘しくなる。
こんな気持ちになるのは、なぜかなあと度々考えるんだけど。一つは、やっぱり『銀河鉄道の夜』だろう。全体の印象としては美しいのだけど、抗えない死の影と哀しみに繋がってる。あと、幼少期に買った、厚み10センチ以上あった『りぼん』増刊号。これに列車の物語が載っていて、何度も読んだことが影響してる気がする。詳しい内容はほとんど忘れてしまったけど、確実に『銀河鉄道の夜』をオマージュしたものだった。そして最後の一番古い記憶。まだ3歳の私と祖母との散歩。母は妹を出産するため病院におり、不在だった。私は祖母に預けられていた。踏切の前で待つ私は、ガタゴトと列車が横切っていく姿を見て漠然とした不安を感じたのだ。ちゃんとまた会えるのかな?と。これが、いまだに私のなかで影響しているのか?
自分はどちらかといえば、匂いの方が記憶と強く結びついていると思ってる。音と記憶が直結しているものなんて僅かだろう。なのに、唯一、列車の音だけがとりわけ大きく居座ってしまっているのかもしれない。