私はロボットではありません

tarishihiko
·

私はロボットではありません。認証ページでその言葉をタップする。似たような写真の中から自転車や橋を選び出す。でもたまに間違える。

でも大体認証はクリアできるから、私はロボットじゃない。多分きっと。

母親が私を出産した直後の写真を見たことがある。幼少期の私の写真を見たことがある。スマホには昨日自撮りした加工で盛れ盛れの私に似たような人物が映っている写真がある。

たぶん私は人間なのだ。

それでもたまに不安になる。

もしかしたら私は昨日死んでいて、今日の私は昨日の私とは違うのかもしれない。

もしかしたら私は秘密裏に生み出された人間の意識を持った高性能なロボットなのかもしれない。

あるいは精密に記憶が作られているだけで昨日なんてものは存在しなかったのかもしれない。

現代で永遠の命を望むなら、AIにでも頼めばいいのだろう。行動パターンも思考も記憶も共有させて限りなく「私に似た何か」を、人間の身体よりもっと頑丈な何かに詰め込めばいいのだと、思う。自分に似た何かを生み出したいと願うことはきっと生物の本能。もっと精巧なニンゲンを生殖を伴わず作り出せる日がいずれやってくるだろう。

実際私はロボットのように生きている。正確に、淡々とレジ打ちをする。大学に行って授業を受ける。あるいは受けているふりをする。みんなと同じように最適解の言葉を紡ぐ。皆に嫌われないように。間違えないように。量産型のニンゲンになるように。

私がロボットではないと心から言える日が来ると願って今日も私は存在し続ける。