中途半端に頭が冴えて眠りづらい夜に、スパゲティを茹でることがある。お腹を膨らませておけば眠れるじゃないか……。その欲望が私を、冷蔵庫を漁るゾンビにする。
こういうときに求めるのは、水気があるもの、それから炭水化物だ。ヨーグルトにジャムを載せてかっこんだり、お茶入れてパンを食い散らかしたりする。
それでも物足りないときは、パスタの出番だ。
私のためだけに、深夜に作るスパゲティ。眠たい頭で茹でているところからすでに、ちょっとした背徳感がある。
ミートソースはつくらない、ナポリタンなんてもってのほかだ。包丁を使わず、鍋一つだけで作れるようにする。これは私だけの夜食だから。
今日は、ほうれん草を手でむしって放り、冷凍肉の欠片を投げ込んだ。パスタを茹でて醤油をかけ、仕上げは鰹節だ。
七味、柚子胡椒、タバスコ。背徳感を高めるために刺激的な味も欠かせない。
皿に盛る。最後に残った理性で写真を取る。蘇ってはじめて食事をするかのごとく、無心で食べきる。
腹が満たされてくると、背徳感は罪悪感にすり替えられている。睡眠には悪影響と聞くしなあ、やっちまったなあ。
食洗機に食器をはめ込み、歯を磨いて寝る。