何者でも無いことが…

たたさん
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中学、高校、大学と自分が生きる世界はあまりに狭くて、その場所で与えられた役割を担うこと、誰かの期待を裏切らず、出来るだけ目の前の人を助けること、それだけを大事に生きてきた。そうしていれば、周りからの信頼も、その信頼から得られる自分への価値も感じることができたから。でも、同時にそれはものすごく窮屈だった。少しでも早く外の世界に出たかったし、ここではないどこかをいつも夢見てた。誰かがつくる「私」を上手に生きることはできたけど、私自身については、何がしたくて、どう生きたくて、どんな能力があって…そんな事は、分からなかった。分からないことにすら気づけなかった。学校を出て道行く私が、何者であるか。氏名と住所、未経験者歓迎で資格不要のアルバイトの経験に、8年も前に取得した英検2級と1ヶ月に数回活躍すれば良いほどの運転免許。誰かの力になりたい。誰かを支える存在になりたい。でもそうなるためには、時間と経験が必要で。それを乗り越える勇気が今の自分にはなくて。できるかもしれないことに期待を膨らませ、背伸びしようとしては、不安になり。自分を社会の何者に当てはめることが苦しく感じるのに、家から一歩出れば、自分の居場所がないことに孤独と無力さを感じて。どうにでもなれ、なんて思っても、どうにかしたい自分が抑えられなくてまたもがいて。ああ、もう疲れた。

「できることに目を向けて」ありふれた言葉の意味をようやく理解できた今。

自分が心の中で思い描く未来がすぐには来ない現実がもどかしくて、クラスと部活と委員会とたくさんの居場所のなかで誰かにとっての私が存在していたことを今では輝かしく思うけど、それでもどうしたって過去は過去で、未来は未来で。今この瞬間にパッと変えるなんてできたら良いけど、できるわけ無くて。

だからどうか、今できることを着実にこなしていくうちに、私自身であることが叶いますように。何者でも無いことを不安に思う私が、私自身であることを幸せであると思える日が来ますように。

どうかどうか私と家族の明日が守られますように。

私が私自身になるまでに、時間が与えられますように。