占いの思い出3選

tato
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【1】

15,6歳の頃、複数階建ての大型スーパーの一角で手相を見てもらった。占い師は初老の女性で彼女は私の手のひらをふむふむと見て、あなたは三人きょうだいの末っ子ねと言った。私は一人っ子ですと答えた。しかし占い師は、あなたには年の離れたきょうだいがいるはずだと食い下がる。いいえ、後にも先にも一人っ子だと私も引かなかった。話し合いの結果、末っ子のような気質の一人っ子ということで双方妥協した。

それから世間話をして、人生いろいろあるけどあなたはまだ若いから大丈夫。若さは宝みたいなまとめで占いは終わった。次はちゃんと見るからここにおいでと裏に住所が書かれたポケットティッシュをくれたが、すぐになくした。

【2】

18,9歳の頃、バイト先の同僚に誘われて当時流行っていた占いボックスに行った。占いボックスとはカラオケボックスと似ており、ビルのフロア内がいくつもの部屋に分かれている。そこで占いをしてくれるのだ。料金は2時間500円と破格の値段。同僚は占い大好きだが、占いボックスという形態と安すぎる金額に不安を抱き私を誘ったのであった。

古ぼけたビルの店内は薄暗く生気がない。受付で必要事項を記入し、名前を呼ばれたら一人ずつ順番に部屋に連れて行かれる。

部屋の中は狭くこれまた薄暗い。正面のテーブルには野村沙知代大絶賛!象牙の印鑑で幸せを掴め!と印鑑を持った野村沙知代が微笑んでるチラシと、私の名前が書かれた姓名判断の紙が置いてあった。

最初の10分間、あなたの名前は不幸が詰まっていてこのままだとろくな人生送れないと数々の不幸事例を語られ、残りの1時間50分は高額印鑑の売り込みをされた。朝昼晩印鑑を100回押すと運が好転するそうだ。毎月たった何千円で何年で云々。

流石に未成年者(当時は20歳が成年)にローンを組ませまいと適当に相槌うってたら、保証人欄に親の名前を書けと強引にローンを組ませようとしてきたので、印鑑押すだけで幸せになれるわけないじゃないですか。こんな印鑑絶対に買いませんとキレながら言ったらようやく解放された。

既に成人だった同僚は私より遥かに拘束が長かった。ようやく釈放されたとき、彼女はキリシタン弾圧を受けた農民みたいな顔をしていた。

心が折れそうになったけどtatoちゃんは絶対買ってないはずと思い乗り越えられたと、夜も更けた帰り道に言われた。500円と時間は無駄になったが、人の役に立ててよかったと思った。

【3】

29,30歳の頃、酔っ払ったついでに繁華街の片隅で手相を見てもらった。占い師はまだ占いを始めたばかりの40代ぐらいの男性で、手のひらと手相の本を交互に見ながら起こる未来をたどたどしく語った。私はとにかく酔っ払っていたので、なぜ手相で人生の全てがわかるのか。ただの皺じゃないかといちゃもんをつけた。占い師は泣きそうだった。

後日、さほど酔っ払っていないときに同じ繁華街を通ったら、占い師はガラの悪そうなお兄ちゃんたちに絡まれていた。

それからもうしばらく経ち、占い師は消えた。

@tato
書き続けていたら少しは上手になるかなという気持ちでやり始めましたが、今は鬼忙しくてあまり書けてないというね