暗い心を持つものは暗い夢しか見ない。もっと暗い心は夢さえも見ない。
(風の歌を聴け 村上春樹)
村上春樹が好きだ。いろいろと好きな作品はあるけれど、あえて決めるならば『風の歌を聴け』か。気が付いたら何度となく読み返している。その理由を今よりも6,7年程若かった私が読書感想文していた。
若い頃から何度となく読んでいる。前回読んだのは去年の7月。この作品を好きと言い切るには、私は歳をとりすぎたように思うから。若い頃は共感できていた鼠や4本指の彼女のままならない怒りを今の私は若さ故の焦燥感であり、主人公の諦念、これもある種の若さであるとわかった風な感想を持つ。随分つまらないものだ。ではなぜ繰り返し読むのだろう。若い頃に読んだ気持ちを取り戻したいからなのか、過ぎ去った若さを懐かしみたいだけなのか。わからないから繰り返し読む。
だそうだ。自分で書いておきながら他人事のように思える。すかしやがってとも思う。残念ながらもっと歳を重ねた私は、この作品を一番好きと言い切るよ。
繰り返し読む理由は、あの頃の気持ちを取り戻したいとか懐かしみたいではなく、何もかもわかったと思いこんでいた自分に対してため息をつかせたいからではないかと思う。
6,7年後の私、否定と新たな考察をよろしく。