朝6時。鳩の鳴き声で起こされた。ベランダの窓から鳩が見える。窓を開けずにガラスではない枠部分をがたごと叩いて追い払う。しかし音が弱くなかなか逃げない。開ければ早いのだが開けたくない。がたごとがたごと。
引っ越したばかりの頃も早朝の鳩に悩まされた。このときの鳩はもっと早起きで、5時ぐらいにやって来ては挨拶代わりにくるるぽくるるぽと鳴いた。窓を開けると逃げていくが、こちらとしてはまだまだ寝ていたいのでいらぬ作業で目覚めたくはない。布団をかぶっても響く鳴き声。仕方なく起きて窓を開けようとしたが、寝ぼけて目測を誤り窓をごつんと蹴ってしまった。意外な音に逃げていく鳩。これはいい。その日以来、鳩が来るたびに私は窓を軽く蹴った。
しかし鳩も賢いもので3日もすると一度の蹴りでは逃げなくなった。二度三度蹴る。少し強めに蹴る。蹴り続けて丁度1週間後、ガラスが割れた。音に驚き鳩は逃げていった。澄み渡る空。床に飛び散る破片と血痕。
掃除をし怪我した足に絆創膏を貼り、管理会社にベランダの窓ガラスが割れたと電話をした。大型連休前だったので実際に修理が行われるには2週間程度かかりますがいいですかと聞かれた。はいとしか言えない圧。その場しのぎで空いた穴をゴミ袋とガムテープで塞いだが、隙間から漏れる深夜の風は冷たかった。
反省した私はその後、窓を蹴らずに枠を叩くことにしたのであった。開けろよ。