微熱

tato
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朝から頭痛がするので鎮痛剤を飲んだ。1 時間ほどで頭痛は治まったが、なんとなく体がだるい。熱を測ると37度。少しだけ悪寒もする。病気の前触れのようだ。食欲はあるので昼ご飯を早々に済ませ、毛布に包まり横になる。

色褪せたフィルムのような色彩の世界。学生時代に母親と暮らしていた部屋に私はカメラを持って立っていた。そういえば母親の写真を持っていなかった。1枚撮らせてもらおう。母親はトイレに入っていた。ドアをノックする。ねえ、写真を撮らせてよ。

ピンポンと玄関からチャイムが鳴った。これに出るとおそらく母親の写真を撮ることはできないだろう。チャイムが鳴る。2回。3回。玄関に向かいドアを開けた。

長い髪の女がいた。ずぶ濡れで髪から水が滴っている。髪で隠れていて両目とも見えない。女は部屋に入ることもなくただ水を滴らせて立っていた。母親の代償にこのずぶ濡れを撮ってやろう。私はカメラのストロボをオンにしてシャッターボタンを押した。光の中に女のシルエットが浮かぶ。フィルムを巻き上げるように目の前の景色が流れていく。あと何枚撮れる?

目が覚めるともう夕刻。汗で全身がびっしょりと濡れている。熱を計ると36度4分。母親の写真を撮ることは二度とないだろう。

@tato
書きたいときにしか書かないことにした