大昔にシナリオ講座というものを受講したことがある。プロになりたかったではなく、当時は映画が好きだったので少しでもエッセンスに触れてみたいという気持ちが強かった。講師は一部熱狂的ファンを持つ監督作品で脚本を担当した経歴の持ち主。シナリオは小説と違い映像表現ができるもの、現実的なものでなければならないと語った。
猫を高層マンションのベランダから実際に投げるわけにはいかないでしょう。
CGでやれるだろうが猫を投げるなどとんでもないことなので頷いた。
講座最終日。期間中に受講生が作ったシナリオのなかから講師が一番良かったものを発表する。選ばれたのは、夫の愛人の子宮にオランウータンの精子を注入してオランウータンの子どもを出産させるという内容だった。
シナリオを書くことはそれっきりだが、現実的という呪縛から解き放たれたオランウータンの子は今でも心に残っている。