たまには本当の出来事を書くことにする。
ただし、自分に面白い文章を書く能力があるわけではないので、本当の出来事ではあるけど夢みたいな出来事を書いて何とか誤魔化してみようと思う。
夢みたいな出来事とは8月31日発行の身内本「夏休みアンソロ」が無事に発行できたという話で、河童に会ったとか、定時に帰れたとか、そういう話ではない。

↑8月6日は水曜日。ニャピは毎週水曜日がノー残業デーなので、早く帰れた喜びと8月9日から始まる9日間の夏休みへの喜びをスターバックスで味わいながら「夏休みは勉強しなきゃ。10月に資格試験があるから9日も休みがあればまあまあ仕上がるんでは?夏休み9日間かあ。それって富豪かも」と頭の中で考えつつ、SNSでこのポストをした。気持ちが浮ついていると理性がうっかり本音を漏らすという体験は、誰もが一度はやってしまうことだと思う。ニャピはこの瞬間がそうだった。
今までで一番早かった発行は16ページくらいの漫画本を企画から納品までで3日間というやつだったから、たしかに頑張ればいけるかもしれない。夏休みが嬉しくてこのポストをしたわけだから、テーマは夏休み(一次創作)が良い。テーマが夏休みなら8月31日に発行できたらそれっぽいし、そうなると締切は10日後の8月16日。3日間で出した本は睡眠を削って描いたけど、夏休みは本来楽しい時間を過ごしたり体を休めるためのものだから、不摂生は絶対にいけない。あとから振り返って「今年の夏休み、締切に追われて最悪だったな」なんてことになったら、一生のうち100回あるかどうかも分からない夏休みのうちの一つを台無しにすることになるのでNG。そう考えていくと自然と「1人でやるより100人でやった方が楽しいに決まってる」に思い至り、1時間後には一次創作に対して前向きな話をしたことがある人、かつ、10日間の締切を笑って流してくれそうな人に声を掛け、自分を含めて10名での執筆が決まった。夢?
夢が叶えば欲が出る。ニャピは愚かな人間なので、夏休みに本を描きたいという気持ちはすっかり遠く、頭の中は「好きな人たちの一次創作!??しかもテーマが夏休み!?!??絶対に よみた すぎるよ!!!」一色になった。
いくら笑って流してくれそうとはいえ、アンソロで締切10日間はさすがに「ない」し、夏休みなんてみんな楽しい予定を入れているに決まってる。なので、1人OKをもらえたらラッキーという気持ちで、何ページかいてもOK、いつでも離脱OK、締切に間に合えば飛び込み参加でもOK、とにかく楽しく夏休みをやれれば不参加でも何でもOK、幸せならOKです。よかったら助けてくださいニャピが読みたいので…という感じで、締切まで何ページになるか分からないまま夏休みを過ごした。ゲストは作品に対して誠実な方たちだから、こういうノリは途中で辛くなるかも。辛くなったらすぐにやめて、楽しい夏休みに戻ってほしい。でも読みたい。とりあえず自分が50ページくらい書いておけば多少は賑やかしになるかな、と舐めた思いで休み前半のうちにサッと原稿を作り、2色刷りの入稿方法や印刷仕様を詳しく調べたりしているうちに原稿が届きはじめた。ノリと勢いで楽しみましょう♪みたいな要項に対して、夏休みの素晴らしさをページがはち切れそうなほどにかわいく、あるいは、美しく表現された最高作品ばかり。これを…これを、たった……10日間で!??!?感激しすぎて意味がわからなかった。夏休みって…夏休みって、こんなに最高なものだったんだ!!!油断したら召されそう、早くこの素晴らしさを本にして後世に語り継がなきゃ。火事などでうっかり燃えたらいけないからなんかすごそうなPPを貼ろう。予定にはなかったけど、生まれて初めてホログラムPPを貼ることにした。ギラついていくぞ。そうして配置をしていき、中表紙やら奥付やらの事務ページなどを挟んでいくとページ数はあっという間に162になった。夢?
夏休みの終盤まですっかり忘れていたことがある。自分は主催なので作品の配置をしなければいけないということだ。作品の配置とは高級百貨店の高級幕内弁当(特上)の盛り付けであって、一人暮らし休日昼の雑盛り丼になってはいけない。どの作品も最高すぎるのに、特大海老天の隣に夕張メロンを配置なんてしたら(うわあ〜〜〜という苦悩の色々、つまんないので中略)というわけで、あまり記憶がない。寝て起きて、ゲストの原稿を読み返したら最高すぎて負の記憶はすべて消えた。結論、100均のフードパックに詰めたって特大海老天は気高く輝く。
記憶がある中で苦しかったことといえば、ページ数だった。元々100ページいったら凄すぎ、50〜70がいいところだと思っていたので、まずは想定の倍以上集まった原稿に「夏休みでみんな忙しいから……」と舐めていた自分を恥じ、深く反省した。全員100ページ寄稿してくれるはずと思わなかった自分が苦しすぎる。何回数え直しても、全部通して162ページある。10進数で162。夢?
ついでに、2色刷りもあった。元々は「赤」「青」どちらかの色刷りで考えていたけれど、締切まで10日しかない状況で悩む時間もなかったので「両方」にした。決定してから気付いたことは、「赤と青」ということは「2色刷り」ということで、2色刷りのためには原稿の出力をインクごとに変えないといけないということだった。その作業を本文全ページ158セット、これはちょっと詰んだかもしれない。人の原稿を触るなんて絶対間違えられない作業を短期間(※舐め切っていたので編集日を1日しか取っていなかった)で!?無理すぎる!弱音を吐いた胃を宥めるため、この時点で納期を後ろ倒しすることにした。ただ、Photoshopを使うほどのプロたちが毎回詰んで毎回一つずつ作業していたらこの資本主義社会はとっくに崩壊しているはずなので藁にもすがる思いで色々探してみたところ、この世のすべてを一括でやってくれる爆速神機能を見つけた(https://helpx.adobe.com/jp/photoshop/using/processing-batch-files.html)。8月31日までポチポチするのかと思いかけた作業が一瞬で終わり、結果、4日遅れの入稿。ここまできたら早割で間に合わせるより通常納期で丁寧に印刷をお願いします、ニャピの送った原稿が変だったら直したいし…と通常入稿。イベントと被らない限りはいつも完成次第送ってくれる印刷所さんにお願いして、のんびり待つ。数日早まれば御の字だなと思っていたら、8月29日に発送したと連絡が来た。100年くらいの前倒し。夢?
夢が叶えば欲が出る。ニャピは愚かな人間なので、ツーアウト満塁みたいなこの状況でどうしても無茶苦茶を快諾してくれたゲストの皆さんに逆転ホームランを打って欲しくなった。その後も色々相談しまくって色々あって、早ければゲストの手元へ8月31日に到着。すごい。こんなことってあるんだ。

アンソロの締切が10日間っていうのはマジで「ない」けど、すべてのタイミングが良すぎて「あり」になることってあるんだ。元々ひとりでやるんだろうなあと思っていたささやかなお遊びは、周りの方々の情熱と器の大きさで完成度の高いアンソロジーになりました。ここまで読んで、自分に酔ってるなあとか、自慢だなあという空気を節々から感じた方。その勘は当たっており、本当にこの記事はただの自慢話です。夏休みアンソロ、すごいでしょ。河童に会ったって言った方がまだ現実味あるよね。あ〜、めっちゃ楽しかった! おわり