暗い降雨を抱えて、この場で躊躇している。明日へ行くでもなく昨日に戻るでもなく、人々が皆行き交うのに、一人でここに躊躇している。濡れてひとけのない雨の屋上、コンクリートの上で雨粒に打たれて冷え続けているビール缶。を開けてコップに注ぐと、発泡する黄金のラガーに雨が混じって、かさが増すごとにだんだんと色彩は落ち、あたりいちめんの夜を飲んで、最後にはすっかりギネスのような黒になっている。むこうに見えているビルの明かりが、すべて自分には関係のない他人の窓ならいいのにと思う。落日してスタウトになる都市の夜に、糖度の低いチョコレートが合う。