ノーランのデビュー作25周年HDレストア版、上映終了間近というので用事ついでに鑑賞。尾行趣味の男が後をつけた相手が泥棒で、泥棒稼業を手伝ううちに面倒事に巻き込まれる話。劇中の大部分は主人公が警察官にこれまでの事情を話しているという「現在」から話している「過去」の話なのだが、その「過去」の中でもどこかの時点に対しての過去、あるいは未来が交互に描かれる作りになっている。時系列入り乱れ構成はすでにこの頃から取り入れていたんだなあということに感動した。これらは基本的に主人公の回想によるものなのだが、主人公が同席しなかった場面も描かれているので、それが主人公の想像によるものなのか客観的事実が自然と挟まれているのか、これはどう捉えたら良かったんだろう。一人称と神視点的描写の混在って文章でやるのはだいぶ面倒だと思うが、映像で見せられるぶんにはただ不穏なだけで違和感がないので、それは映画表現の面白さでもあるのかもしれない。
開けても開けてもまだ新事実が出てくるノーラン的多重構造には慣れたものだと思いつつも途中で理解が追いつかなくなり、それでも最後にはすっと腑に落ちる作りで面白かった。コブ役のアレックス・ハウ氏は今作以降俳優業はやめられたということだが、ノーランが好きそうなタイプの人だなあと思ったので、この監督が自分の映画につれてくる俳優の趣味って全然変わっていないんだろうな。