「メールとか手紙とかさ、私たちもそういう何かでやりとりしてみようよ」
ミコがそう言い出して、私たちは話し合って式神でやりとりすることに決めた。小さなうさぎにつのが生えた式神が、授業中の私の肩に乗ってくる。ミコは駄洒落みたいな式神を作ることに凝っていて「兎角」は最新作らしい。ジャッカロープみたい、と私が言うと、不思議そうな顔をしていた。ムーを読め、ムーを。
「とにかく」ちゃんが私の耳元で、ミコの声でささやく。「放課後、ポッポ寄ろう」、そんなこと直接言えばいいのに、私たちはあえて式神を使ってコミュニケーションをとっている。だって、楽しいから。
私は昔ながらの妖怪が好きなので、「赤へる」に模して作った式神をミコに派遣する。いいよ、って返事だけを持たせて。式神のいいところはほとんどの人間には見えないところ。授業中の教室内を私たちの式神が跳ね回る。まるで私たち自身がはしゃぎ回っているみたいに。赤へるがぽよぽよと跳ねながらミコの肩に乗る。伝言を聞いたミコが振り向いて、親指と人差し指で丸を作ってみせて、笑う。そこは式神使わないんだ。私が笑うと、赤へるもひとつ目をぎゅっと細めて笑った。